関西電力<9503>、中国電力<9504>、九州電力<9508>と日本原子力発電は、運転開始から40年が経過しようとする原発5基について、廃炉を選択する方向であることを明らかにした。老朽化と安全対策にかかる費用がかかり過ぎ、その上、最新の原発と比較すると電力出力は半分程度しかない。再稼働すると採算が合わなくなるためだ。対象となるのは福井県にある美浜原発1号機と2号機、敦賀原発1号機、島根県の島根原発1号機、佐賀県の玄海原発1号機。
2011年3月11に起きた東日本大震災の影響で、福島第一原発から放射性物質が漏れ出るなど大事故が発生。これをきっかけに、原発の安全性が見直され、13年6月には原子力規制委員会によって原発の運転期間を原則40年とする制度が新たに導入された。40年を超える場合の運転には、延長のための審査が必要で、通常の検査よりさらに厳しい「特別点検」をクリアすることが義務づけられている。このため、40年以上の原発の稼働について、廃炉か再稼働かが議論されてきた。
原発の運転期間「40年」を基準とした廃炉は今回の5基が初めてのこととなる。正式決定は3月の予定だが、廃炉の方向へ動いたことで新たな問題も浮上。莫大な廃炉費用が、今後、電気料金に転嫁される可能性が出てきたのだ。
経済産業省は1月14日、廃炉会計制度見直しに関する有識者会議を開いた。そこでまとめられた報告書案は、電力小売り全面自由化後も原発の廃炉費用を電気料金に上乗せすることを認める内容となっている。利用者はどの電力会社を選択しても、廃炉費用を負担することになる。すなわち、これからいくらかかるか予想もつかない廃炉費用を、そのまま国民が背負うというわけだ。
原発の運転期間が原則40年という流れになると、今後続々と廃炉になる原発は増えていく。廃炉が増加するにつれ、電気料金の負担はさらに重くなっていくだろう。負の遺産をどう処理していくか、大きな課題が突きつけられている。(編集担当:久保田雄城)