15年度の国内のビル管理市場規模は前年度比2.7%増の3兆7,634億円

2016年10月06日 08:37

 矢野経済研究所では、国内のビル管理市場の調査を実施した。調査期間は2016 年 6月~9月、調査対象はビル管理事業者。調査方法は同社専門研究員による直接取材、及び電話アンケート調査、文献調査を併用した。
 
 それによると、2015年度の国内のビル管理市場規模(元請金額ベース)は、前年度比102.7%の3兆7,634 億円となった。前年度下半期から続く受注増の流れに乗り、また品質重視のビル管理業務が求められていることもあり、堅調な推移となった。

 ビル所有者(オーナー)からの管理費減額要請は継続しつつも、新しい案件に対するビル管理事業者の品質重視の提案が受け入れられており、低価格競争から脱却し、品質確保、付加価値による業務単価の向上が可能な市場環境へと転換している。また、品質重視の観点から、信頼感があり、実績と信用を持ち合わせた大手ビル管理事業者のシェアの拡大、寡占化の傾向が進んでいるという。

 ビル管理業務の内容は、リニューアル、改修等の工事に対する意識が依然として高く、省エネ設備の導入だけでなく、導入後の稼働状況のフィードバックや運用改善指導などのソフト面の支援まで幅広く業容が拡大している面もある。単に工事だけで終わらないサービスを提供することで、業務品質の向上を図ることができる点も業務単価の底上げにつながる一助となる。業容の拡大が進む中で、きめ細かなサービスやソフト面の支援にもニーズが出てきているとしている。

 グローバルな展開では、海外のビル管理事業者との合弁企業の設立など、大手ビル管理事業者を中心としてグローバル市場への進出が加速している。また、外国人労働者の受け入れについても一段階進んでおり、大手ビル管理事業者において受け入れが開始される例もある。人口減少の始まった日本においては将来的な人材不足は明らかであり、特に企業体力のある大手ビル管理事業者においては、将来への道標を積極的に創り出していく意欲が求められるとしている。

 2016年度のビル管理市場規模(元請金額ベース)は、前年度比で103.0%の 3兆8,759億円と予測している。2016年度も、引き続き管理業務品質の維持、向上が求められており、業務品質に対する信頼感が大きい大手ビル管理事業者への寡占化傾向が進行していくとみる。高品質の業務提案が定着し、価格競争に陥らない付加価値のあるビル管理業務が求められていることから、微増傾向での推移となる見通しであるという。

 今後も、2015 年度から好調な需要領域(宿泊施設の管理業務、リニューアル等建物修繕など)の拡大がさらに進むものとみられ、ビル管理事業者は各社とも同領域への取り組み姿勢を強めている。また、業務効率化はもちろんのこと、業務品質を高めていくことでビル管理事業の立ち位置を明確にすることを目的としている。具体的には、新築時からの建物維持管理、稼働中のビル管理運営、修繕や改修に対するビル管理事業者の取り組み姿勢への認知の向上と実際の業務の受注獲得、その後の設備状況やビルのエネルギー管理、省エネや環境への効果・結果の情報発信、次世代のビル開発に対する提言まで、ビル管理事業が持つ一連の流れのすべてにおいて、一段一段とステップアップし、付加価値を創造し提供していく企業姿勢が求められていると考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)