地方創生とは、従来からの東京一極集中を改善するとともに、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力向上を目的とした一連の政策である。政府は、2015 年末にまち・ひと・しごと創生総合戦略(2015 改訂版)を公表している。矢野経済研究所では、地方創生における地方銀行の動向調査を実施した。調査期間は2016年6月~2016年8月、調査対象はメガバンクや地方銀行、官民ファンド、大手 SIer、IT ベンチャー企業等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
それによると、融資の面では、ローカルベンチマークの活用が広がり、事業性評価を伴う ABL(動産担保融資)や「地方創生私募債」などの私募債による融資事例が、地方銀行において増加すると考えるという。その結果、融資額全体としては、横ばいではあるものの、事業性評価を伴う融資額の割合が徐々に増え、従来の担保を伴う融資額と同等、もしくはそれ以上の割合を占めていくと予測している。
また、DMOや従来の地方銀行の情報システム共同化などをきっかけとした、地方銀行同士の広域連携がより活発化していくと予測している。また、広域連携をきっかけとしたホールディングス(持株会社)の設立など、緩やかな統合が増えていく可能性がある。さらに、メガバンクによる地方銀行の買収、統合も始まる可能性があるほか、ホールディングスを設立するなど大型化した有力地方銀行による積極的な買収・統合が進む可能性もあると考えるとしている。
さらに、特にリレーションシップバンキングを掲げる地方銀行を中心に、DMOや農林水産業の 6 次産業化、医療・介護など、ICT と関連性の強い、幅広い分野において大手SIer との協業が活発化していくと考えるという。また、多くの地方自治体が、地方版総合戦略においてベンチャー企業支援を掲げており、地方創生関連領域でのベンチャー企業の参入が進み、これらのベンチャー企業と地方銀行との協業が活発化すると考える。FinTech は、地方銀行とベンチャー企業の協業に直結する代表的な分野であり、特にクラウドファンディングや決済、クラウド会計などの領域において、活用がより一層加速する可能性があるとしている。(編集担当:慶尾六郎)