タイヤメーカーにとって東南アジアの新興国は新規参入先として魅力的な存在だ。原材料の価格低下もこの後押しとなっており、2015年以降では22の市販用タイヤのブランドがタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンの主要都市に参入した。GfKは同4カ国で自動車タイヤのPOSトラッキング調査を実施していた。
市場競争の激化は力のないブランドの市場撤退を促すが、今年の各市場におけるブランド数をみると、タイでは90ブランド、フィリピンでは75ブランドにのぼった。また、マレーシアでは53ブランド、インドネシアでは48ブランドであった。
2016年1-8月におけるタイヤの販売本数をみると、タイは前年比8%増、マレーシアは同3%増となった。この一方で、インドネシアとフィリピンは同2%減、同3%減と前年を僅かに下回った。
タイのタイヤ販売は2012年、15年に実施された自動車購入奨励策(ファーストカーバイヤー制度)に後押しされる形で成長が続いている。同施策により車販売は大きく伸びており、次年度以降のタイヤ需要の拡大が見込まれるとしている。
マレーシアのタイヤ販売本数はプラス成長となったが、消費税施行後の低需要期との対比であるところが大きかった。この一方でブランドの積極的なプロモーションにより、平均価格は低下しており、販売金額ベースでは縮小した。マレーシア中央部の動向をみると、2015年4月の消費税導入時にはメーカーサイドの激しいプロモーション活動により平均価格が前年から24%下落した。価格競争は16年も継続しており、平均価格は前年からさらに26%下落した。マレーシアほどではないが、価格下落はタイやフィリピンでも見られたという。
タイヤメーカーは幅広い消費者層に対応するため低価格帯製品の提供を活発化しているが、こうした戦略はもろ刃の剣といえる。消費者にとっては様々な価格帯の製品選択肢があるというベネフィットが生まれるが、メーカーにとっては、ブランドのエクイティとバリューを薄れさせる危険性があるためだ。
インドネシアの自動車保有者は最も手ごろな価格帯のタイヤを好む傾向にある。インドネシアのタイヤ平均価格は14年は52USドルであったが、現在では48USドルに低下した。タイのタイヤ平均価格は90USドルとインドネシアの約2倍高いが、2年前は98USドル、昨年は94USドルであり、下落基調にある。また、最も価格低下が進むのがマレーシアで、14年は91USドルだったタイヤの平均価格は、昨年は72USドルとなり、今年(1-8月)では54USドルとなった。(編集担当:慶尾六郎)