東京商工リサーチの発表によると、老人福祉・介護事業の倒産が1月から9月の累計の時点で昨年を上回っているという。その中心となっているのが小規模・零細の事業者。その原因として販売不振や 運営計画の甘さ、そして介護報酬改訂があった。
東京商工リサーチが2016年1月から9月にかけての老人福祉・介護事業の倒産状況について発表した。同期間の累計倒産数は77件。これは2000年1月に調査を開始して以来最多の倒産件数になった昨年(15年1月~12月)の76件をすでに上回っている。負債総額は82億9600万円と前年同期と比べて62.7パーセント増しとなった。倒産した事業者の内訳を見てみると、負債5千万円未満の小規模が68.8パーセント、設立5年以内が46.7パーセントと小規模、新規の事業者を中心に倒産していることが分かる。
倒産の原因としては販売不振が51件(前年同期比104.0パーセント増)と最も多く、次いで事業上の失敗10件、設備投資の過大が5件となっている。倒産原因の約7割が販売不振となっているが、これは同業間での競争激化だけでなく、安易な起業や異業種からの参入失敗など運営計画や準備の甘さから小規模・零細が経営不振に陥ったケースも多いようである。このように、高齢化社会といわれる現代日本において老人福祉や介護事業は需要が多く売り手市場と思われがちだが、淘汰の流れが出てきている。
小規模、零細の事業者が倒産する理由は他にもある。15年4月の介護報酬改定により、基本報酬を減額し、充実した介護サービスを行う事業への加算がアップした。加算の対象になるサービスとは、医療ニーズを持つ中重度の要介護者や認知症高齢者が引き続き在宅生活を送ることができるようにする支援などである。小規模・零細の事業者にとって、このような支援における介護報酬加算の条件を満たすことが困難である場合が多いようだ。そのため、事業者は利用者にとって充実したサービスを提供することができればこれまでよりも多く報酬を得ることができるが、そのようにはいかない小規模・零細の事業者は安定した報酬を得ることが難しくなっている。高齢化社会が進む現在、利用者のニーズも多様化している。それに対応するためには小規模や新規参入事業者への経済的支援も求められてくるのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)