国内企業のIT予算は堅調に増加 28.5%の企業が「増額」

2016年10月20日 06:57

国内企業のIT予算は堅調に増加しているという。アイ・ティ・アール(ITR)は、国内企業を対象に2016年8月から9月にかけて実施した国内IT投資動向調査の一部結果を発表した。今回の調査では、従来から定点観測しているIT予算の増減傾向、重視するIT戦略などに加えて、全110項目に及ぶ製品・サービス分野の投資意欲、海外進出企業のITガバナンスの実情などについて調査を行った。2,685件の有効回答を得た。

 それによると、2016年度(2016年4月~2017年3月)のIT予算は、前年度から「増額」とした企業の割合が28.5%と、前年調査における2015年度の値(21.3%)を大きく上回り、2013年度以来、3年振りに4分の1を超える水準となった。一方、「減額」とした企業の割合は9.7%と前年調査の結果(8.8%)から若干上昇したものの、一桁台にとどまった。

 2017年度(2017年4月~2018年3月)に向けた見通しでは、「増額予定」が「減額予定」を大きく上回る傾向には変化がないものの、大幅な予算の増加(20%以上の増加)(20%以上の増加)を見込む企業の割合が減少しているほか、減額を見込む企業の割合が二桁台に達するなど、やや弱含みの様相となっているという。

 調査では、IT予算に占める「情報セキュリティ対策」「災害対策」「内部統制」といったリスク対策費用の割合も定点観測しているが、今回の調査結果においても、その割合は引き続き上昇していることが示された。なかでも情報セキュリティ対策費用は、過去最高を記録した前年調査からさらに1ポイント以上の上昇となる「16.4%」を記録した。災害対策費用、IT内部統制向け費用の割合も、前年調査結果を上回っており、IT予算の増額分の一部がリスク対策に振り向けられている現象が浮き彫りとなっている。

 次年度に最も重視するIT戦略キーワードを問うた結果では、上位6項目の順位は前年調査から変動がないが、「ビジネス・イノベーションの創出」がトップ10に食い込んだほか、「従業員のワークスタイル革新」が大きく順位を上げた。一部の企業において変革が重要なキーワードとして認識されていることがうかがえるとしている。

 全有効回答のうち、すでに海外に事業拠点を設置済みの企業は32.3%(858社)、準備中ないし検討中の企業を含めれば56.6%(1,503社)と半数を超えており、事業のグローバル化は着実に進展している。今回の調査では、今後に向けて、そうした海外進出企業のITガバナンスの主導権が国内(本社)から海外へ移転する可能性が示唆された。グローバルで利用されるITシステムの標準化のアプローチについて問うたところ、現在の取り組みとしては「日本の要求水準を全世界に展開する」との回答が最多だったが、将来のあるべき姿については、「海外で標準とされる環境を日本を含めた全世界に展開する」との回答が大きく値を伸ばして最多となった。今後、海外進出企業においては、グローバル・スタンダードがより重視されるものと見られるとしている。(編集担当:慶尾六郎)