IT専門調査会社 IDC Japanは、国内ITサービス市場予測を発表した。
それによると、国内ITサービス市場は2016年以降も低率ながら成長を継続し、2020年には5兆8,062億円になる見通しだという。2015年~2020年の年間平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)は、1.5%と予測している。
国内ITサービス市場は、2009年から2011年まで世界的な金融危機と景気後退、さらには東日本大震災の影響を受けて3年連続でマイナス成長が続いた後、2012年から4年連続でプラス成長を実現してきた。特に2014年、2015年の2年間は前年比成長率で3%を上回る高い成長となった。この間の成長を支えたのは、企業の業績回復を背景とした既存システム更新/拡張需要に加えて、金融機関におけるシステム統合/更新や、官公庁/地方自治体での支出拡大、小売業における店舗システム刷新といった大規模なプロジェクトだった。
2016年に入るとこれらの大型案件が一段落し、成長率は鈍化するとみられる。また、成長のドライバーはデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する支出に移っていくとIDCでは予測している。たとえば、IoT(Internet of Things)、デジタルマーケティング、ビッグデータを活用した製品/サービスイノベーション、ITを活用した新たな事業開発などの案件がそれにあたるという。特に2018年以降は、こうした案件実現のためのコンサルティング、システム開発、アウトソーシング支出が同市場をけん引していくとIDCではみている。
ただし、DXが市場に浸透する中で、国内企業のIT支出の形態は、これまでのようなシステム開発、アウトソーシングといったITサービス関連支出から、クラウド(特にSaaS:Software as a Service)、BPO(Business Process Outsourcing)などの代替サービスへと移っていくことも予測される。このことは、国内ITサービス市場拡大の阻害要因としても働くとしている。
国内ITサービス市場は、DXを軸として大きな変革期を迎えているという。DXは、単なるサービス/製品の変化にとどまらず、企業のIT投資行動、サービス提供価値、ITサプライヤーの競合など、市場に関わるあらゆるものを変革するような「パラダイムシフト」である。IDC Japan ITサービス/コミュニケーションズ/IPDS/ユーザーサーベイ グループディレクターの寄藤幸治氏は「ITサプライヤーはDXを自らの成長機会とすべく、今一度提供サービス領域やケイパビリティの見直しを行うとともに、DXを志向する顧客の要望に応えられるようなサービスデリバリー体制を整えていく必要がある。たとえばスタートアップ企業や主要顧客とのアライアンス、既存のITの範囲にとらわれないサービス提供などがそれにあたる」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)