IT専門調査会社 IDC Japanは、2016年3月に実施した「国内中堅中小企業ユーザー調査」および同年7月~9月に実施したベンダー、SIerなどへのヒヤリング調査結果などを基に国内中堅中小企業IT市場におけるベンダーの動向を分析しその結果を発表した。
「国内中堅中小企業ユーザー調査」において、サーバー、PCといったハードウェア、およびパッケージソフトウェアの導入状況の調査結果を見た場合、中堅中小企業(従業員規模:999人以下)ではハードウェア、およびパッケージソフトウェアの選定において重視する事項は「価格」の回答率が最も高くなっているという。同様に購入先選定の理由としても「価格」を挙げる企業が最も多くなっている。このように中堅中小企業では、製品、チャネル選択において「価格」が重要視されており、中堅中小企業向け製品の「コモディティ化」が進むとみている。ベンダー、販売チャネルにおいて製品単位での差別化は困難になっていくことが見込まれるとしている。
大手国内ベンダー/外資系ベンダーでは、中堅中小企業向けビジネス強化を継続的に図っており、営業体制の強化、ビジネスパートナーの支援の拡充を図っているほか、事業戦略など支援の幅が拡大している。特に販売パートナー向けにクラウドの取り扱いの支援を強化している。SIer、販売代理店においても、収益拡大、および差別化を図るために新しいソリューションと組み合わせた提案を積極的に行っている。特に従業員規模に関わらずニーズが高まっているモバイルに加えて、徐々にニーズが拡大するクラウド、データアナリティクス関連のソリューション提供を行うSIerも増加しているという。
国内中堅中小企業IT市場では、製品の「コモディティ化」が加速しており、従来のような既存システムの更新案件中心のビジネスは縮小傾向となるだけではなく、他社との差別化も困難となっている。ユーザー企業へのアプローチの拡充、または包括的なサポートなどを積極的に提供することで他社との差別化を図る必要があるが、ベンダー、SIerが単独で対応することは困難な場合も多くある。IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャーの市村仁氏は「ITベンダーは、販売パートナーだけではなく、他業態の企業も含めてエコシステムの構築を目指すべきである」と分析している。(編集担当:慶尾六郎)