東北地方のモノづくりが加速している。その中心となっているのが、日本の自動車メーカーの雄、トヨタ自動車だ。
トヨタ自動車は震災当時、宮城県を愛知、九州に次ぐ国内第3の生産拠点と位置付け、2011年1月から新工場で自動車生産を始めたばかりだった。多くのメーカー同様、同社の工場も被害を受けたものの、数日後には電力復旧と同時に点検・試運転を果たし、翌4月には震災前の40%程度の生産を確保するまでに回復した。その後もトヨタの東北拠点化戦略は変わらないどころか、むしろ拡大戦略をとり、12年には同社グループの車両生産委託先など3社が合併した「トヨタ自動車東日本」を発足して強固な体制を築いている。また、同12年は岩手工場で製造している「アクア」の販売が好調だったことから、東北地方における車両生産台数もセントラル自動車と合わせて前年比4割増の50万台規模に膨れ上がった。
自動車産業は裾野の広い産業だ。自動車を生産するためには、1台あたり数万点に及ぶ材料や部品が必要なため、最終製品を販売する自動車メーカーだけでなく、部品の製造業者も大きな恩恵を受ける。また、販売・整備・運輸など関連産業も広い範囲に及ぶため、地方経済を活性化する為にはまさにうってつけの産業といえる。我が国の重要な基幹産業であるとともに、震災で大きな被害を被った東北地方には復興の大きな力となっている。
実際、東北7県の知事や産学の有識者により構成される「東北地方産業競争力協議会」が14年に策定した成長戦略においても、自動車産業は東北地域における戦略産業と位置づけられており、地域一体となった取り組みが行われている。東北地域には現在、電子部品・デバイス、輸送機械、情報通信機械など多様な産業が集積し、これを支える機械加工、金型、樹脂成形、表面処理、鋳鍛造、プレス加工等の卓越した技術を持つ企業も充実しているが、その勢いは衰えず、未だ新規参入企業が増えるなど、拡大、加速を続けているのだ。
例えば、自動車用防振ゴムで世界トップシェアの住友理工も 2015 年 4 月に同社100%出資による 子会社、住理工山形株式会社を設立、自動車用防振ゴムの製造・販売を開始しており、今月11日には開所式が開かれた。
住友理工は現在、世界23ヶ国 105拠点で事業を展開し、日本、米州、ヨーロッパ・アフリカ、中国、アジアの世界 5 極での製品開発及び供給体制を確立して、グローバル戦略を着実に進めているが、住友理工山形は為替変動の影響を受けない事業基盤の再構築と、地産地消で競争力のある製品の安定供給を目的に、愛知県の小牧製作所と大分県の住理工九州に次ぐ日系自動車メーカー向け製品の生産拠点として展開されるという。
東日本大震災から5年以上が経った今もなお、東北地方では被災者たちの厳しい生活が続いている。東北地方が復興し、飛躍するためにも、トヨタや住友理工など大手企業の自動車産業の拠点化成功に大いに期待したい。(編集担当:藤原伊織)