2016年10月 5日、日本の二輪車業界に大きな衝撃が走った。1979年頃から1983年頃にかけて、業界では「HY戦争」ともいわれるほど、オートバイ市場において激しく覇権を争った、本田技研工業とヤマハ発動機が、日本国内の50cc原付スクーターや、電動二輪車を含めた原付一種領域での協業に向けた業務提携について検討を開始したと発表したのだ。
かつてのライバルが手を組んだ背景には、国内の二輪車市場の縮小や、安全基準や排ガス規制の強化など二輪市場を取り巻く環境が厳しくなっていることなどが考えられるが、世界規模でみてみると、オートバイの需要は拡大傾向にある。とくにインド市場などの新興市場では日本メーカーは順調に売上げを伸ばしており、今後も急速な経済成長による、現地の慢性的な交通渋滞などを背景に需要の伸びが期待されている。またアフリカなどの未開拓市場への期待も高く、有望なマーケットと考えられており、将来的にここでどれだけ販売台数を伸ばしていけるかが、国内外の二輪車メーカー各社にとって、運命の分かれ道となりそうだ。
インド以外にも、日本の二輪車メーカーはインドネシアやタイ、ブラジル、中国、パキスタンなどの新興国で絶大な人気を博しているが、その理由はやはり、自動車や電化製品などと同じく「品質と性能」にある。しかし、とくに安全性が求められるオートバイにおいて世界のファンが求めているのは、さらにその上の「信頼性」だ。
米消費者団体専門誌「コンシューマーレポート」でも、日本製のオートバイは最も信頼性が高いと評価されている。同紙によると、その中でも最も信頼性が高いといわれているのがヤマハ、続いてスズキ、ホンダ、カワサキとなっている。
では、世界が認める「ヤマハの信頼性」とは何だろう。それは、バイク本体のみならず、それをケアする整備士の質によるところも大きいと思われる。
ヤマハ発動機では「One to One Service(プロの整備技術でひとりひとりのお客さまとのより良い関係づくり)」を合い言葉に、「世界中のヤマハ販売店で、どこでも均一で高品質なサービスが受けられること」を目的に掲げ、独自の世界統一基準によるサービスマン教育プログラム「YTA(ヤマハ・テクニカル・アカデミー)」を2000年より推進しており、2016年10月現在ですでに46拠点・約33000人がYTA認定整備士としての資格を有し、各国地域で活躍しているのだ。
また、世界21の国と地域から選抜されたヤマハ二輪サービスマン(ディーラー・販売店のメカニック)21名がサービスの「技」を競い合う「ヤマハ・ワールド・テクニシャン・グランプリ」を2年に1度開催し、整備技術の向上意識を高めるなどの取り組みも行っている。競技は、「スポーツモデルクラス」と「コミューターモデルクラス」の2つのカテゴリーに分かれ、タイヤ交換などの基礎整備の正確性を競う「基礎整備技術競技」、故障の原因を的確に診断し修理する技術を競う「故障探求競技」、修理箇所の説明などお客さまとのコミュニケーションスキルを競う「お客さま対応競技」の3種目でサービスの「技」を競い、その総合得点により順位を決定する。10月12日、第7回となる2016年大会がヤマハ発動機本社で開催され、スポーツモデルクラスでは、日本代表の鮫島遼平(YSP川崎中央)さん、コミューターモデルクラスは、インド代表のジグネシ・ギリシュクマール・ラナ(PLANET AUTOMOBILES)さんが優勝した。日本人の優勝は2003年の第2回大会以来、13年ぶりという。
日本製品に対する信頼性は、日本という国や日本人への信頼性にもつながる。とくに安全面で生命と直結する自動車やオートバイなどはなおさらだ。売って終わりではなく、ヤマハのようにアフターケアまで含めて質の高いサービスを提供することこそが、日本ブランドの真骨頂だ。アフリカをはじめとする新興市場でも、きっと高い評価で受け入れられることだろう。(編集担当:藤原伊織)