15年度の国内の介護食市場規模は加工食品が前年度比 3.7%増の991億円、調理品が1.6%増の4,942億円

2016年10月30日 08:09

介護食とは、主に要支援・要介護認定を受けた高齢者等が特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、有料老人ホームなどの高齢者施設や病院で食べる食事や在宅で食べる食事である。高齢者施設や病院で日常的に食される給食サービスや、専門のサービス事業者が自宅まで届ける在宅配食サービスなどがこれに該当し、当該対象者は高齢者施設や病院の要支援・要介護認定者と在宅の要支援・要介護認定者となる。

 矢野経済研究所では、国内の介護食市場の調査を実施した。調査期間は2016 年7月~9月、調査対象は給食サービス事業者、在宅配食サービス事業者、加工食品メーカー。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話等によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。

 それによると、2015年度の国内の介護食市場規模は、加工食品(メーカー出荷金額ベース)が前年度比 103.7%の991億円、調理品(末端売上高ベース)が前年度比101.6%の4,942億円となった。高齢化を背景に、介護食の利用者は増加傾向にあり、ここ数年、市場規模は順調に拡大している。

 年々、介護食の利用者は増える一方であり、介護食を提供する高齢者施設や病院、在宅配食サービス事業者が不足しているのが現状であり、政府による新たな施策が待たれるところであるという。とりわけ、在宅配食サービスに対する公的補助は食(生活)の自立支援の観点から、費用的には削減の方向にあり、食糧価格の高騰や人件費の上昇を背景に、利用者、サービス事業者ともに負担増に喘いでいる。

 また、2015 年度の介護食市場の内訳をみると、調理品では高齢者施設での調理による給食の割合が最も高く、次いで病院での給食が高かった。加工食品では、濃厚流動食の割合が最も高く、次いで嚥下食の割合が高かった。

 介護食(加工食品)の咀嚼困難者食には、大きく分けて 「やわらか食(きざみ食)」と「ブレンダー食(ミキサー食)」の2種類があり、前者がより健常高齢者の食事メニューに近く、後者がより介護度の高い高齢者の方向けメニューとなっている。咀嚼困難者食は、当初、病院、高齢者施設向けに病院向け食品問屋ルート等から販売されていたが、ここ数年は一般市販ルートへ徐々にシフトしている。有力メーカーであるキユーピーの「やさしい献立シリーズ」の発売は 1999 年 8 月であり、明治の「やわらか食シリーズ」の発売は 998年10月である。アサヒグループ食品(株)(旧和光堂)の「食事は楽し」シリーズも2001年3月の発売と、いずれも長い歴史を持っている。

 加工食品メーカーが提供する介護食(加工食品)は高価であり、在宅の要支援・要介護認定者が毎日利用するのは難しい。その点、毎日配食してくれる在宅配食サービスの介護食(調理品)は比較的安価で、管理栄養士がメニュー作成に携わっており、栄養面も考慮されているため、在宅の要支援・要介護認定者が利用しやすいという。(編集担当:慶尾六郎)