解散は新選挙制度の下で。今すべきことに専念を

2016年11月12日 09:41

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衆院小選挙区での議員1人当たりの人口は現行定数(295)では42万4889人。改正後(289)は43万3711人となる

 政府による衆院選挙区画定審議会で区割り改定案づくりが本格スタートした。9日の審議会で平成27年国勢調査人口(確定値)に基づく計算結果が示され、小選挙区においては「青森」「岩手」「三重」「奈良」「熊本」「鹿児島」で定数が各「1」減り、比例代表については全体で「4」減となる。

 衆院小選挙区での議員1人当たりの人口は現行定数(295)では42万4889人。改正後(289)は43万3711人となる。人口の最大格差は鳥取の28万5029人に対し、東京の52万5468人と1.844倍となる。

 今回の見直しでは小選挙区の定員が減る6県のほか、人口最少県(鳥取)での人口最少選挙区(鳥取1区、2020年の見込み人口27万7569人)に比べ、2倍以上か、1倍未満の格差が生じる選挙区についても見直しの対象になるので、見直しされる選挙区は100にのぼる。

 ただ、それでも、こうした区割りについて、区割り審議会は予定より早い来年4月に安倍晋三総理に改定案を勧告する考えで、政府が勧告に基づき公選法改正案を提出し、国会審議が順調にいけば新しい区割りの下での選挙は6月から適用できることになる。

 そこで安倍総理に是非、お願いしたい。こうした背景からも、一時、話題になった1月の衆院解散は、行わないよう願いたい。この時期に、あえて解散し、国民に信を問うべき材料はない。これまでに示している政策の実効を上げることに専念頂きたい、とお願いしたい。

 TPP関連法案を今国会で成立させることが政府・与党の方針と菅義偉官房長官、二階俊博幹事長の発言などでも明確にメッセージとして発信され続けてきた。成立後に、国民の追認を受けるためなどと理由をつける解散はすべきでない。

 また南スーダンPKO活動に駆けつけ警護を付与したから信を問うというのも解散して問うものではない。他国軍への駆けつけ警護は想定していない旨を稲田朋美防衛大臣は記者会見で示している。

 懸念するのは、衆院選挙が新しい区割りの下で来年6月から実施できる可能性があるのに、現職議員への配慮(10議席減ることは決まっているので)や特に影響の大きい自民党内部の事情(選挙区の候補調整など)から、現行制度のまま、1月に衆院解散に踏み切り、現行議員定数の延命を図り、2年程度の延命の中で、新しい区割りの下での候補者調整を図ろうという姑息な対応がなされないかということだ。

 二階幹事長は11日の党役員会後の記者会見で「党選対委員長から1、2回生の選挙対策について、きめ細かくやっているということでした」と選挙指南がすすんでいることを語った。

 その一方で衆院選挙の区割り調整については「具体的にどこの選挙区がどうなるという実態が明らかになった段階で、できるだけ救済措置というか、十分な対応が選挙に臨むに際してできるように準備していくというのは党としては当然のことだと思っている。これからです」と話している。解散は今任期ギリギリまでせず、国内・外交課題に実をあげる取り組みを進めることに専念するよう期待したい。(編集担当:森高龍二)