昨年来、各住宅メーカーがラインナップを進めているスマートハウス。そこに搭載される太陽電池・HEMS・蓄電池はスマートハウスの三種の神器とも呼ばれ、商品ラインナップも充実しはじめている。しかし従来は、光熱費の削減が出来る上に環境対策にもなるということで、太陽電池の搭載が積極的に進められ、2009年には家庭用燃料電池が世界で初めて一般住宅に販売。蓄電池に関してはあまり重要視されてこなかった。
こうした環境下で発生したのが、昨年の震災である。それに伴う電力不足により、限られたエネルギーをいかに効率的に利用するかという意識が向上。「光熱費削減」と「非常時の為の備え」といった役割を持つものとして蓄電池にスポットが当たり、電気自動車の蓄電池に蓄えられた電力を家庭で使うためのシステムが市場に登場するまでに至った。しかし、依然として家庭用の蓄電池は定着しておらず、富士経済の調査によると、2012年の搭載見込み件数は8000件程度。HEMSの搭載見込み件数2万件と比べると、一向に普及が進んでいない状況が窺える。
また今年に入ってからの蓄電池を巡る動向も、ソニー が太陽光発電と組み合わせて自立型蓄電システムを実現する業務用蓄電池を発売、ファミリーマート が太陽光発電とリチウムイオン蓄電システムを搭載した「ファミリーマート船橋金杉店」をオープンさせるなど、家庭用を中心には動いていない。唯一、シャープ が、満充放電を8000回繰り返しても初期の70%以上の容量を維持する住宅用定置型リチウムイオン蓄電システムを発売した程度である。それも、月産台数は250台と真に普及を図っているとは思えない台数である。
家庭用蓄電池の普及に対し、依然として立ちはだかるのがコストの壁である。スマートハウスに搭載される蓄電池で200万円程度は必要である。価格が下がり始めているとはいえ、普及するにはさらに下がる必要があるであろう。電気自動車の車載電池を住宅に供給するV2Hシステムは、クリーンエネルギー自動車等導入対策費補助金の対象であるため30万円程で導入ができるが、そもそも電気自動車自体が高価である。電気事業連合会のデータによると、1世帯当たり年間の停電時間は平均で例年15分以下、台風等の影響があった年で3時間以内である。非常用としてのみ蓄電池を利用するのであればポータブル蓄電池でも賄えるかもしれない。しかし、光熱費削減をも見据えた導入の場合は、太陽光発電機器やHEMSと連携する必要があり、それらの機器と同じメーカーで揃えなければならない。今年に入って発売されたソニーやシャープの蓄電池も、同社製の太陽光発電機としか連携は出来ない。依然として高いコストに、不自由な連携、補助金頼みの普及策。本当に家庭用蓄電池を普及させるつもりがあるのであろうか。(編集担当:井畑学)