産総研が超低消費電力で駆動できる新原理のトランジスタを用いたLSIを開発

2016年12月10日 20:40

 あらゆるモノがインターネットでつながるIoT(Internet of Things)の普及に伴い、生活空間のあらゆる箇所に無数の自立電源で動作する無線センサノードが設置され、ネットワーク化されることが予想され、無線センサモジュールの超低消費電力化が重要な課題となっている。このような背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト「エネルギー・環境新技術先導プログラム/ULPセンサモジュールの研究開発」において、産業技術総合研究所などの9機関は共同で、超低消費電力センサモジュール技術構築に関する先導研究を2014~2015年度の間、実施してきた。今回、その成果をもとに、産総研は0.2~0.3Vの超低消費電力で駆動が期待できる新たな原理のトランジスタを用いたLSIの動作実証に成功した。

 開発した回路は、トンネル電界効果トランジスタ(トンネルFET)を用いたもので、トンネルFETは、0.2~0.3Vの超低消費電力での駆動および高い動作周波数での使用が期待されているトンネル効果を利用したトランジスタだが、N型およびP型からなる相補型LSIの形成の困難さがボトルネックとなり、動的回路動作での実証は行われていなかった。

 今回、NEDOプロジェクト「エネルギー・環境新技術先導プログラム/ULPセンサモジュールの研究開発」での先導研究において抽出された課題の一つであるトンネルFETの動的回路動作の実証を、産業技術総合研究所が独自に実施し、リング発振回路を用いて動的回路の動作確認に成功した。これにより、トンネルFETを用いたLSIの性能向上を動作周波数で検証することが可能となり、実用化に向けた検討段階に入り、動作速度の改善と動作電圧の低下に向けた研究開発を行い、複雑な回路への応用や動作周波数の向上を目指す。

 2016年6月、NEDOプロジェクト「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/超低消費電力データ収集システムの研究開発」に採択され、新たな体制で研究開発を推進しているという。超低消費電力LSIを用いたデータ収集システムを開発し、多種多様なアプリケーションへの展開を目指す方針だ。(編集担当:慶尾六郎)