製造過程で二酸化炭素を吸収 ユーグレナ由来のプラスチック開発へ

2016年12月29日 09:18

 循環型社会の実現や温室効果ガスの削減が叫ばれるなか、従来の化石資源を原料とするプラスチックの替わりに、バイオプラスチック開発への期待が高まっている。バイオプラスチックの原料として近年注目を集めているのがバイオコハク酸だ。バイオコハク酸は、酵母などに糖を与えて発酵させることで生産され、生産量は年々増加している。しかし、糖は食料と競合することから代替技術が模索されていた。今回、明治大学農学部らの研究グループは、ユーグレナからバイオコハク酸を生産する技術を開発。微細藻類によるバイオコハク酸の安定的な生産を目指す。

 同研究グループは、酸素濃度をできる限り低くした培養条件(暗・嫌気条件)で、ユーグレナがコハク酸を細胞外に放出することを発見。さらには酸素が充分にある培養条件(明・好気条件)でユーグレナ細胞を窒素欠乏にした後、暗・嫌気条件にすることで、コハク酸生産量が通常培養時の約70倍(869.6 mg/L)に増加したとのこと。これは、微細藻類によるバイオコハク酸生産の世界最高記録となる。微細藻類を利用したコハク酸の生産では、培養時に二酸化炭素を吸収するため温室効果ガスの削減に寄与できる。現時点では、工業生産レベルである数十g/Lよりも低い生産量となっているが、研究を進めることで、最終的にはユーグレナと二酸化炭素によるバイオコハク酸生産の社会実装を目指すとのこと。

 植物と動物の性質を持つユーグレナは、バイオプラスチックの原料のみならず、食料や繊維、飼料、肥料、バイオ燃料など多岐にわたる分野での活用が期待されている。東大発のバイオベンチャー「ユーグレナ」が世界で初めてユーグレナの大量培養に成功しており、国を挙げた研究が進められている。たとえばユーグレナ由来のジェット燃料では、燃焼で二酸化炭素を発生するが培養時に吸収するため、循環型燃料としての実用化が期待されている。今回のユーグレナ由来のバイオプラスチック開発も、科学技術振興機構の主催する低炭素技術開発に特化した研究プログラム(JST戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発ALCA)の一環となり、「ユーグレナ」や理化学研究所なども研究に加わっている。温室効果ガス削減は世界的な課題となっており、ユーグレナを活用した技術が、低酸素社会の構築に寄与することが期待される。(編集担当:久保田雄城)