【今週の展望】新年早々お屠蘇気分は吹き飛ばされるのか?

2017年01月03日 20:57

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噂が噂を呼んでいる「新年相場大崩れ観測」。大崩れまでいかなくても、調整局面はくる。しかし、1年前とは状況が大きく違うので、下げても深くはなく、長くもないだろう。

 おそらく、かなりの数の投資家が気をもんでいたのが「昨年の二の舞」だろう。2016年は大発会の1月4日からいきなり下落に次ぐ下落で、日経平均終値は前年大納会の19033円から2月12日の14952円まで、1ヵ月半足らずで21.4%も沈んだ。その記憶も新しく、昨年11~12月にトランプ・ラリーで7週連続で上昇したこともあり、「新年相場大崩れ観測」は噂が噂を呼んでいた。

 もし、昨年も「掉尾の一振」になり、たとえば年末高値引けで日経平均2万円にタッチしてオーラスなどという出来すぎの終わり方をしていたら、テクニカル指標は「買われすぎ」シグナルの満艦電飾不夜城で、新年相場の大崩れの心配は相当程度、現実味を帯びていただろう。

 だが、そうではなかった。最終週は2万円タッチどころか、大納会の30日の朝には19000円台すらも危うかった。大きな上昇相場の後には大崩れとまでいかなくても、調整局面は必ずやってくるが、それが年明けを待たず、早めにやってきた、ということ。おかげでテクニカル指標はほぼニュートラルな状態で新年を迎えることができ、それこそ色の付いていない真っ白な状態から再スタートできる。

「新年相場大崩れ」の恐れはかなりの程度、緩和されたとみていい。くわしい説明は省くが海外の原油先物市場、債券市場、為替市場、日銀の金融政策などファンダメンタルズ面でも1年前と状況は大きく異なっている。もし下落局面がきたとしても深くはなく、時間的に長くもないだろう。

 むしろ、12月にイタリアの銀行の問題、東芝の問題などリスク要因がゾロゾロ出てマーケットがそれなりに動いてしまったので、今週は3日間しかないこともあり、アメリカ雇用統計待ちの様子見もあり「穏やかな年の初め」を迎えられそうなムードが漂っている。テクニカル的に言えばボリンジャーバンドが軸になり、下値は-1σの18494円、上値は+1σの19404円と想定しても、そのゾーンから上下に飛び出す可能性は小さいだろう。年末最終週も26~28日、終値はほぼ19400円付近だったが、終値ベースでは引き続き、この水準が上値抵抗線(レジスタンスライン)になりそうだ。

 一方、今週の下値支持線(サポートライン)として考えられるのは心理的な節目の19000円、25日移動平均線の18949円、12月メジャーSQ値の18867円あたりで、安値の19000円割れは12月中旬以降、30日の1日のみにとどまっている。日経平均先物(大阪、SGX、CME)もそれをなかなか割り込まない。

 しかし年が明けて真っ白な状態からの出直しになるので、12月のことは忘れて素直にボリンジャーバンドの-1σの19494円を下値のメドに想定したい。トランプ次期大統領の発言、中国リスク、テロ、地政学的リスクなど、警戒すべきことは少なくない。昨年は1月6日、北朝鮮が「水爆」実験を行って日経平均を急落させ、お屠蘇気分を吹き飛ばした。

 ということで、2017年の新年第1週の日経平均終値の予想変動レンジは18500~19400円とみる。

 東京市場が「大いなる『いってこい』相場」だった2016年から年が明け、2017年はトランプ新政権の発足にアメリカの金利上昇、ヨーロッパで相次ぐ選挙と、海外のリスクが取り沙汰されている。国内は衆議院の解散がない限りは補欠選挙以外の国政選挙がなく、規模の大きな選挙は夏の東京都議選ぐらい。自民党の総裁任期は3月の党大会で連続3期9年に延長されるのが確実で、延期された消費税率の10%への引き上げは2019年10月までない。日本の国内政治が静かになる分、「経済の年」になりそうだ。

 とはいえ、日銀の金融政策は昨年、マイナス金利まで導入して「やれることは、みんなやった」感がある。企業業績は回復しても個人消費が一向に上向かない国内景気の現状では、日銀の関係者は「出口戦略」とか「テーパリング」といったこれまでと逆方向の言葉は口が裂けても言えないから、2017年も日銀会合のたびに金融政策現状維持が繰り返されそうだ。その分、政府の経済政策への期待が大きくなってくる。年金や医療や福祉などで将来への不安が少しでも緩和されれば、国民は財布のヒモをゆるめて個人消費が動き出すと思われるが……。

 2017年の大きなトレンドとしては、金利が上昇するアメリカに新興国から投資資金が逆流する恐れがあり、特に注意を要するのは中国。中国政府が「不動産バブルつぶし」でハードランディング政策をとると、日中間の貿易も、国内の小売業、サービス業を潤しているインバウンド消費も悪影響を受ける。しかも、トランプ次期大統領はロシアのプーチン大統領とは仲が良いが、中国については選挙中から貿易問題で敵視している。

 2017年は「ヨーロッパのストレート一発も怖いが、中国リスクのボディブローも決してあなどるな」だろう。もし、日米の金利差拡大で為替のドル円が120円を超える円安になっても、「円安は全てを癒す」と、喜んでばかりはいられない。(編集担当:寺尾淳)