少子化や受験者数の減少によって、教育関連業者は厳しい経営環境を余儀なくされている。特に地方や経営体力のない小規模業者は、大手との競合で経営が立ち行かなくなるケースが多い。また、ここ数年は大手予備校や学習塾においても生徒数の減少で経営が悪化しており、合併や提携などの動きが加速している。
一方、私立学校数は増加する反面、少子化に歯止めがかからず、定員割れとなる学校も出てきている。さらに、推薦枠の増加や個性豊かな人材確保のためのAO(アドミッションズ・オフィス)入試の普及で、浪人生や受験者数が減少。2014年には大手予備校の「代々木ゼミナール」を運営する学校法人高宮学園(東京都渋谷区)が27校のうち20校の閉鎖を発表するなど、大手も生き残りを賭けた経営が求められている。その他、子どもの習い事や大人の自己啓発のためのスクールも生徒数の確保に苦慮しており、教育関連業界に淘汰の波が忍び寄っている。
帝国データバンクは、2000年~2016年(1月~11月)の「教育関連業者」の倒産動向(負債1000万円以上の法的整理を対象)について分析した。
2016年(1月~11月)の教育関連業者の倒産は77件発生しており、2000年以降で最多の2009年(93件)に迫るペースで推移している。負債総額は35億 9700万円となり、既に前年を上回っている。少子化や大手との競合を要因とする負債5000万円未満の小規模業者の倒産が目立つ。倒産件数全体では、世界的な景気低迷の余波を受けた2009年をピークに減少傾向が続くなか、教育関連業者の倒産は2015年以降、増加に転じている。
2014年~2016年(1月~11月)を業種別上位で比較すると、2016年は教育関連業者の倒産77件のうち「学習塾」が31件(構成比40.3%)でトップとなり、全体の4割を占めている。学習塾は、少子化で生徒数の確保に苦戦するなか、大手との競合で経営が立ち行かなくなるケースが増えている。学習塾業者は、生徒の合格実績やクチコミによって生徒数が変動しやすく、講師などの人件費や家賃、広告宣伝費が収益を圧迫し、経営が軌道に乗るまでに時間を要する。また、大手や有名学習塾のフランチャイズ(FC)に加盟した場合、本部へ支払うロイヤリティーが 10~30%と他業種よりも高いことから、廃業や撤退を余儀なくされる業者が少なくない。次いで「資格取得スクール」(11件、構成比14.3%)は前年(5件)に比べ倍増している。11件のうち美容関連の資格取得スクールが5件を占めたほか、自動車学校(1件)も含まれている。
かつては企業研修などで一定の需要があった「パソコン教室」(5件、構成比6.5%)は、リーマン・ショックや東日本大震災をきっかけとした企業の投資意欲の減退で、法人向けの講習や研修の減少が影響したとみられる。また少子化に加え、個人消費低迷のあおりを受けやすい「音楽教室」「語学教室」は生徒数の確保に苦戦を強いられている。なかでも「語学教室」は東日本大震災の際に外国人講師が一斉に帰国したことで業績が悪化した企業もあったほか、社会人を中心にスカイプなどを利用して格安レッスンを受けられるオンライン英会話やフィリピン・セブ島などへの語学留学に人気がシフトしており、学習方法の多様化によって同業との競合を余儀なくされている業者が目立つとしている。(編集担当:慶尾六郎)