韓国政府は慰安婦に関する一昨年12月の日韓両国政府の最終的で不可逆的な合意に基づいた事項の履行とその精神を踏まえ、国民の理解を得るよう一層積極的に政治力を発揮すべきだ。今、試されているのは韓国政府の政治力(課題を現実的に処理していく遂行能力)といえよう。
未来志向での日韓関係構築へ「慰安婦での最終的な合意」「日韓軍事情報の包括的保護協定(GSOMIA)締結」など日韓間での最も高い壁を安倍政権・朴政権の努力でクリアしたばかり。ともに両国歴史に残る案件だ。そして、乗り越えた壁を後戻りさせてはならない。今回、その鍵を握っているのは韓国政府そのものであることを韓国政府は強く自覚すべきだろう。
日韓両国政府で最終合意した慰安婦事案は、その直後から、合意に反対する韓国の市民団体や政治勢力から韓国政府に対する批判がくすぶり続けていたが、朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友だった女性の政治介入疑惑から朴大統領が職務停止に追い込まれた昨年12月9日夜以降、この声が一層、大きくなった。
そして、12月28日、釜山の日本総領事館前歩道に慰安婦を象徴する少女像が市民団体の手によって許可なく設置された。そのため一時、地元自治体(釜山市東区)と警察により強制撤去されたが、29日、稲田朋美防衛大臣がA級戦犯を合祀する靖国神社に参拝したこともあり、30日には少女像撤去に対する抗議が自治体業務に支障をきたす程に殺到した。このため自治体は自治体では対応できないと少女像設置を認めてしまった。韓国政府は地元自治体に任せず、国家間の約束事として、この問題に直接介入すべき。
一方、日本政府は合意履行を韓国政府に求めるとともに、この少女像撤去を求めたが、撤去されないことから、菅義偉官房長官は6日の記者会見で、一昨年の慰安婦をめぐる日韓両国政府の最終合意に反するなどとし「対抗措置をとらざるを得ない事態になったことは残念だ。約束したことは履行してほしい」(菅長官)と残念そうに語った。
菅官房長官は政府として長嶺安政駐韓大使、森本康敬釜山総領事を一時帰国させる、日韓通貨交換(スワップ)協定再開に向けた協議を取り止める、日韓ハイレベル経済協議の延期を行うと発表した。また、引き続き韓国政府と地元自治体に少女像撤去を申し入れていくとした。
日韓両国にとってマイナス以外の何物でもない。この事態に憂慮する両国国民は少なくないだろう。筆者もその一人だ。韓国政府の積極的な取り組みを願うばかり。(編集担当:森高龍二)