日韓関係に悪影響を及ぼしている韓国市民団体が釜山市の日本総領事館前歩道に設置した慰安婦を象徴する少女像を巡り、12日、在日韓国人や韓国系日本人らでつくる「在日本大韓民国民団」の新年会であいさつした呉公太(オ・ゴンテ)団長が「少女像を撤去すべきというのが、わたしたち在日同胞の共通した切実な思い」と語った。
「切実な思い」と表現するところに、日韓の慰安婦問題に挟まれ、ヘイトスピーチに悩まされてきた民団の人たちの深く悲しい苦しみを感じる。
一昨年12月の慰安婦を巡る問題の「最終的、かつ不可逆的解決」としての日韓合意に「誠実な態度で履行されなければ、問題は永遠に解決されない」と危惧した。この思いを共有できる人は日本人であれ、韓国人であれ多いだろう。
呉団長は「合意が履行されず、再び両国関係が冷え込み、私たち同胞はまたも息を殺して生きなければならないのか」と強い危機感を示したとの報道もある。
彼らの声をこそ韓国政府は素直に受け止め、思いやり、冷静な判断の下、結果を早く出していくべきなのだろう。
呉団長は1月1日の民団新聞のあいさつで「韓日間で締結した『慰安婦問題』や『GSOMIA』(日韓軍事情報包括保護協定)合意が、きちんと履行され、韓日関係がより一層発展することを祈願いたします」と団員や在日同胞に発信した。
また、差別を扇動する表現のヘイトスピーチ問題についても日本に「対策法」が制定されたことを感謝するメッセージを織り込み、そのうえで、対策法に罰則規定のないことや選挙運動でヘイトスピーチを仕掛ける人が散見されることなども踏まえ「地方条例の制定や『対策法』がヘイト根絶の決定打になるよう精度を高める法改正」を求めている。
ただ、こうした運動が成果を生むかどうかも、良好な日韓関係の政治醸成、経済活動、文化交流の活発化など、土壌づくりが進んでこそのものなのだろう。やはり、韓国政府がリーダーシップを発揮し、少女像問題に結果を出していくことが今、一番必要だ。
聨合ニュースがくしくも、韓国外交部・尹炳世(ユン・ビョンセ)長官の話として「尹長官が13日、国会外交統一委員会に出席し、釜山の日本総領事館前に旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する少女像が設置されたことについて『国際社会では外交公館前に施設物や造形物を設置することは国際関係の側面から望ましくないというのが一般的な立場』との認識を示した」と報じた。
この視点で、政治力を働かせて頂くことが必要だ。聯合ニュースは「尹長官は同委員会への新年業務報告で『慰安婦合意が破棄されれば、韓日の両国関係や対外信用など、国益に深刻な影響が出る。合意の精神を尊重しながら着実に履行する』との姿勢を表明した」とも伝えた。まさに、両国の国益に合致する判断であり、早期の行動が求められている。(編集担当:森高龍二)