2015年12月から労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が施行され、企業に対してストレスチェックの実施が義務化されている。ストレスチェックを受けるかどうかは従業員が選択できるが、全ての労働者がストレスチェックを受検することが望ましいとされ、企業は制度の周知や推奨に力を入れる必要がある。これまでストレスチェックは、中小企業で実施や準備が遅れていることが指摘されていた。こうした背景をうけて保健同人社とヒューマネージは、ストレスチェック義務化1年目に従業員の受検状況を調査した。
調査結果によれば、従業員のストレスチェック受検率の平均は88.4%となった。さらには、従業員の9割以上が受検した企業が全体の約6割(59.6%)を占め、受検率100%の企業も5%を上回っていた。企業規模別の受験率(平均)は、従業員数「51~100 名」で91.6%、「101~300 名」で88.7%となり、いずれも全社平均より高くなった。このことから従来、対応の遅れが不安視されていた中小企業についても、制度開始から1年でストレスチェックの普及が進んだとみられる。
ストレスチェックは受験することで、メンタルヘルス不調の従業員を早期に発見し、相談機関等での面談やセルフケアにつなげることができる。受験するのみではほとんど意味がなく、メドピアが医師に対して行ったアンケートでは、ストレスチェックがメンタルヘルスの一次予防に対して効果がないと答えた医師は6割以上(「どちらかと言えば効果はない」(45.3%)、「まったく効果はない」(16.8%))となっている。
また、実対策についても属性や個々の症状に応じたものが求められており、たとえば、メンタルヘルス不調の患者が若年化の傾向があることを考慮して若年層への配慮を手厚くするといった対応が必要だ。ニッセイ基礎研究所によれば、02年ではメンタルヘルス不調者の割合が男女とも70歳代をピークとして年齢が上がるほど高い傾向があったのに対し、14年調査では40代頃を中心とする就労世代で最も高くなっている。厚生労働省の10年1月から15年3月までの調査では、うつ病などの発症時の年齢が、男性で30代が436人(31.8%)で最も多く、40代が392人(28.6%)、20代が262人(19.1%)となっている。女性についても30代が最多で195人(31.2%)、次に20代の186人(29.8%)と若年層でのメンタルヘルス不調が目立つ。受験率が順調に伸びているストレスチェックだが、有効な実対策につなげることが次の課題となる。(編集担当:久保田雄城)