積水化学工業の2016年4~12月期決算 高機能製品が貢献し、通期の8期連続営業増益、4期連続最高益更新に向け、視界良好

2017年02月01日 20:26

 ■収益性が改善し、営業利益は第3四半期累計では過去最高益更新

 1月30日、積水化学工業<4204>が2016年4~12月期(第3四半期)決算を発表した。売上高(7662億円)は前年同期比で4.2%減。営業利益(615億円)は11.0%で過去最高益を更新。経常利益(637億円)は17.2%増。四半期純利益(399億円)は1.3%減。四半期純利益の2017年3月期の通期業績見通しに対する進捗率は67.6%で、為替差損、投資有価証券評価損を計上した第1四半期の進捗率がわずか0.11%だったことを考えれば、大幅に改善して順調と言える。

 第3四半期の売上減の要因はスマホ向け製品の販売減、生産調整によるもの。利益は秋からの為替の円安が効いて増益幅が拡大している。特に営業利益は3つのカンパニーがともに増益になり、全体では2ケタ増益になった。住宅販売は新商品を中心に分譲、建売とも引き続き好調で、都市部では建て替えの受注も出ている。高機能、高付加価値の自動車用の樹脂製品も伸びている。海外は管材関連の事業構造改善の効果が現れ収益性が改善した。四半期純利益は特別利益の減少、税金費用の増加の影響で前年同期比で減益だった。

 カンパニー(セグメント)別では、住宅カンパニーは前年同期比で売上高1.4%増、営業利益2.7%増。新築住宅事業は昨年4月発売の「Gシリーズ」が建て替え向けに受注を伸ばした。住環境事業はパッケージ商材「高耐久・外装リフレッシュ」が好調。環境・ライフラインカンパニーは売上高3.0%増、営業損益は黒字転換して過去最高益更新。国内事業の収益性改善施策、原価の低減が効果をあげた。海外事業は構造改革で損益が大幅に改善している。航空機向けプラスチックシートを製造するアメリカの新工場がフル稼働し、収益に貢献した。高機能プラスチックスカンパニーは売上高6.4%減、営業利益6.2%増。スマホやタブレット端末の減産の影響を受け両面テープなどエレクトロニクス分野は減収だったが、車輌・輸送分野、住インフラ分野、ライフサイエンス分野など他の戦略分野の収益の伸びがカバーすることで、営業利益は過去最高益を更新できている。

 ■2020年代半ばの売上高2兆円を目指し今後はM&Aなど積極投資を推進

 2017年3月期の通期業績見通しは、売上高は10億円上方修正し1兆670億円で前期比2.7%減、営業利益は20億円上方修正し960億円で6.9%増、経常利益は40億円上方修正し920億円で13.3%増とした。当期純利益は590億円の見通しを据え置き4.1%増で、減収増益の予想。16円の期末配当、32円の年間配当の見込みは修正しなかった。

 業績上方修正の理由は、為替レートが当初の見通しよりも円安に振れ、特に高機能プラスチックスカンパニーでの売上高、営業利益の増加、為替差益の計上で全体の経常利益の増加が見込めること。採算の改善については事業構造改革の効果も加味している。

 通期で8期連続営業増益、4期連続最高益更新での着地を目指す第4四半期の全社的な施策として、高機能品へのシフト、構造改革の完遂、生産・物流体制の最適化、生産・出荷の平準化など「収益力強化」、開発、新商品投入の加速、協創による次世代事業の創出を目指す「イノベーション」、グローバル成長市場、新分野、新用途を開拓する「フロンティア開拓」を掲げている。

 次期中期経営計画(2017~19年度)の投資計画は、戦略投資額が現在の中期経営計画(2014~16年度)の約2倍の2000億円を予定し、成長が見込めるライフサイエンス分野、車輌・輸送分野、エレクトロニクス分野でM&Aを積極的に推進していく考え。海外拠点は、住宅や環境インフラのビジネスの拡大が見込めるインド、アフリカ、東南アジアなど新興国を中心に新設、増設を進める計画がある。借入金の増加も承知の上で、意欲的な戦略投資を進めていくという。

 2020年代半ばまでの長期的な売上高目標は、2017年3月期の通期見通し1兆660億円の1.87倍の2兆円という数字に、照準を合わせている。(編集担当:寺尾淳)