矢野経済研究所では、国内の自治体向けソリューション市場の調査を実施した。
それによると、2014年度は、個人番号利用・個人番号カード交付の社会保障・税番号制度(マイナンバー)への対応の必要性から、各地方自治体は、個別の状況に応じてマイナンバー制度への準備を開始し、2014年度の自治体向けソリューション市場規模は前年度比4.8%増の6,102億円となった。一方、マイナンバー制度への対応方針が決まらないことなどにより対応が遅れる自治体や、システム設計の段階で留まっている自治体も多かったとしている。
2015年度は、前年度同様にマイナンバー制度対応のための案件受託が増加した。また、総務省から「統一的な基準による地方公会計マニュアル」が公表され、地方自治体において「地方公会計標準ソフトウェア」導入準備など新地方公会計制度対応が進められた。さらに、総務省の自治体情報セキュリティ対策検討チームによる報告「新たな自治体情報セキュリティ対策の抜本的強化に向けて」において、情報セキュリティ対策の抜本的強化が求められ、具体的な指針として「自治体情報システム強靭性向上モデル」と「自治体情報セキュリティクラウドの構築」が示されたことで、セキュリティへの対策需要が増加した。こうした複数の需要により、2015年度の同市場規模は、前年度比3.2%増の6,297億円となった。
2016年度は、前年度同様に新地方公会計制度対応と情報セキュリティ対策の抜本的強化に関連する案件が増加している。また、国民健康保険の運営主体が市町村から都道府県へ移管されることに伴い、「国保保険者標準事務処理システム」(都道府県、市町村、国民健康保険団体連合会が運用する各電算処理システムの総称)の開発案件も増えているため、2016年度の同市場規模は、前年度比2.0%増の6,425億円となる見込みであるとしている。
201年度は、新地方公会計制度対応や情報セキュリティ対策の抜本的強化、国保保険者標準事務処理システムに関わるシステム改修を前年度内に実施できなかった地方自治体が、システムの改修に取り組んでいくと見込まれるため、市場規模は前年度比0.5%増の6,457億円と前年度並みの市場規模を維持すると予測した。
2017年度~2020年度は、マイナンバー関連では、2017年1月にマイナポータルがオープンし、7月には国・地方自治体のオンラインでのマイナンバーを活用した情報連携、2018年には健康保険証とマイナンバーカードの一体化が予定されており、マイナンバーの利活用により新たなサービスが創出されていき、それに伴って地方自治体のシステム開発が進められていくと予測した。また、システム運用に関わるBPO需要の拡大や、2020 年東京オリンピック・パラリンピックに向けた公共インフラの老朽化への対応、訪日外国人客の増加による観光関連やセキュリティ対策の強化などが、中長期的な需要拡大要因として期待できるとしている。
今後クラウド化が進むことで自治体におけるシステム運用コストの削減が進んでいくという。そのため、2017年度から2020年度では同市場規模はほぼ横這いの推移になると予測した。2013年度から2020年度までの自治体向けソリューション市場の年平均成長率(CAGR)は1.3%で推移し、2020年度の同市場規模は6,360億円になると予測している。(編集担当:慶尾六郎)