人口減少と産業構造の変化にともない働き手の奪い合いが生じているなか、アベノミクスの成長戦略を進めていくうえで人手不足が大きなネックとなっている。有効求人倍率の上昇や失業率の低下など労働市場が逼迫することは、求職者には明るい材料となる一方、企業にとっては人手不足の長期化で人件費上昇などのコストアップとなる。そこで、帝国データバンクは人手不足に対する企業の見解について調査を実施した。
まず、現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ(「該当なし/無回答」を除く)、正社員について「不足」していると回答した企業は43.9%で、企業の4割超が正社員の不足を感じていた。正社員が不足している企業の割合は前回調査(2016年7月時点)から6.0ポイント増加し、過去10年で最も高くなった。企業の人手不足感は一段と強まっている。
「不足」していると回答した企業を業種別にみると、「放送」が73.3%(前回調査比 3.6 ポイント減)で最も高く、2016年7月、2016年1月、2015年7月と4回連続でトップとなった。以下、「情報サービス」(65.6%、同5.6 ポイント増)、「メンテナンス・警備・検査」(62.9%、同12.9ポイント増)、「人材派遣・紹介」(60.8%、同 19.1ポイント増)、「建設」(60.1%、同6.9ポイント増)が6割台になった。6割以上となった業種は前回調査の2業種から5業種へと増加、人手不足感が10ポイント以上増加した業種は2業種から10業種に増え、人手不足が拡大している様子がうかがえるとしている。また、「家電・情報機器小売」(58.3%、同 6.7ポイント減)や「運輸・倉庫」(58.1%、同10.0ポイント増)など16業種が5割以上となった。
他方、「出版・印刷」や「繊維・繊維製品・服飾品卸売」、「輸送用機械器具製造」は2割台にとどまるなど、人手不足感が最も高い業種と最も低い業種における割合の差は46.0ポイントと、前回調査(60.2 ポイント)からは14.2ポイント縮小した。差が縮小したのは、すべての業種で2割以上となるなど、不足感の低い業種の不足割合が上昇したことに起因しており、企業の人手不足感は強まっている。
規模別にみると、「大企業」(51.1%)では半数を超える企業が「不足」と考えている。また、「中小企業」は 42.1%、中小企業のうち「小規模企業」は 38.2%が不足していた。規模の大きい企業ほど正社員に対する不足感が強くなっており、この状況が中小企業の人材確保にも影響を与えている可能性があるとしている。
非正社員が「不足」していると回答した企業(「該当なし/無回答」を除く)は 29.5%となり、前回調査に比べ4.6ポイント増加した。また、「適正」と考えている企業は63.1%で、回答した企業の3 社に2社にのぼった。他方、「過剰」と回答した企業は半年前の 2016年7月調査よ2.4ポイント減少し7.4%となった。(編集担当:慶尾六郎)