IT化が進めづらいとされてきた人事の現場でも人工知能(AI)の進歩によって自動化が促進されてきている。サービスが市場に多く出回り、導入する企業も増えていく中で、今後企業の人事制度も大きく変わるかもしれない。
これまでIT化が進めづらいとされてきた人事の現場でも人工知能(AI)の進歩によって自動化が促進されてきている。中でもよく知られているのが「HRテック」だ。Human ResourceとTechnologyをかけ合わせた造語で、AIによって勤怠管理から給与計算、更には採用、教育、評価といったあらゆる人事業務を行うシステムだ。米国では普及が進んでおり、すでに企業価値が10億ドルを超えるシステム開発会社が現れるなど、新たなビジネスとして注目されている。
日本ではウォンテッドリーが運営する「Wantedly」が有名だ。月間120万人が利用、導入企業も2万社に昇り、求職者のスキルと採用側の条件を照合し、人と企業をマッチングする。また人材派遣会社であるネオキャリアは勤怠、労務管理を一元化する「jinjer」を16年1月よりリリース。勤怠データによってモチベーションが下がっている従業員を割り出し、離職を防ぐことができるという。
システムが市場に投入される中で、導入する企業も増加している。日清食品ホールディングス<2897>は12年から社員の顔写真や経歴や人事評価、TOEICスコアといったデータをクラウドで管理。経営者や人事担当が素早くデータにアクセスでき、人事評価がスムーズになったという。
今後もこうした人事のIT化は進んでいくことだろう。これまでは上司や人事担当者、経営者が1人1人の能力や働きぶりを見て評価をしていたものが、定量的な生産性や売上といったデータを用い、コンピュータから人が評価されるという時代も遠くないかもしれない。
コンピュータによって評価の公平性は向上するだろう。しかし人事評価においては、実績はもちろん、「がんばり」や「やる気」「人柄」といった数値化できない主観的な側面や、目標到達までのプロセスも評価指標とされている。コンピュータによってそういった主観的な側面やプロセスをどのように評価するかがこれからの課題だと思われる。(編集担当:久保田雄城)