次世代の移動体通信の通信方式である「5G」。10Gbpsを超える通信速度やLTEの約1000倍にもおよぶ大容量化で、大きな期待が寄せられている。しかし、通常、近接する複数の端末と基地局が同時に通信するために、それぞれの端末に対してビームを形成すると、互いの信号が干渉し合い通信品質が低下する。また、柱やビルなどの障害物によって発生する信号の反射、回り込みなど、直接波以外の信号 (マルチパス) を活用して大容量化することは困難だった。
今回、NEC<6701>は、NTTドコモ<9437>と共同で、5Gの実現に向けて、5Gの要素技術であるMassive MIMO(Multiple Input Multiple Output)の検証実験を神奈川県横須賀市および東京都渋谷区で実施した。実験では、NECが開発した低SHF帯超多素子AAS(Active Antenna System)を使用した。
今回の実験は、電波の反射や回り込みなどが起こるビルや電柱・車や人が混在する屋外や、柱や壁など障害物が多い屋内環境において、基地局に低SHF帯超多素子AASを適用して行った。AASがスマートフォンやタブレットなどの端末ごとに適切な指向性を持った信号(ビーム)を形成し、大容量化や通信品質の向上が可能であることを検証した。また屋内では、LTEに対して約8倍の周波数利用効率を安定して実現できることも確認した。
具体的には、ビルや電柱・車や人が混在する屋外や、柱や壁など障害物が多い屋内において、NECの低SHF帯超多素子AASを基地局に適用して検証実験を行った。NECのAASは、ビーム形成の精度向上を実現するフルデジタルビームフォーミング制御を採用。対象端末に対してのビームを形成するとともに、マルチパスを利用して干渉する信号を打ち消すビームを形成できるという。また、自信号のマルチパスを効率よく直接波と合成することで通信品質を向上させるビームを形成することもできる。
これらにより、複数の端末が近接している場合でも、高い通信品質を維持したまま同時に複数の端末との通信を可能とし、大容量化や通信品質の向上を確認した。また屋内では、LTEと比較して約8倍の周波数利用効率を安定して実現できることも確認した。
NECは、5Gを実現する超多素子AASとその制御技術などの研究開発を行っている。高い周波数帯の中でも、特に低SHF帯は2020年頃の商用化が見込まれているため、早期実用化に向けて積極的に取り組んでいるという。 (編集担当:慶尾六郎)