DVD1枚分の情報を約0.5秒で伝送 広大らが毎秒105ギガビットのテラヘルツ送信機の開発に成功

2017年02月10日 07:58

 テラヘルツ帯は、これからの高速無線通信への利用が期待されている新しい周波数資源である。国立大学法人広島大学、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、パナソニック<6752>は共同で、シリコンCMOS集積回路により、300GHz帯単一チャネルで毎秒105ギガビットという、光ファイバに匹敵する性能のテラヘルツ送信機の開発に世界で初めて成功した。この周波数範囲は、国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)の世界無線通信会議(WRC)2019で議論される予定の275GHzから450GHzの周波数範囲に含まれているという。

 研究グループは昨年、300GHz帯で直交振幅変調(QAM)を用いることにより、CMOS無線送信器の通信速度が大幅に向上することを実証した。今回の研究成果は、チャネルあたりの通信速度を昨年の6倍にする技術を開発したことで、世界で初めて1チャネルあたり毎秒100ギガビットを超える送信速度を達成したもの。毎秒100ギガビットは、現在のスマートフォンと比較して100~1000倍高速で、DVD1枚分の情報を約0.5秒で伝送できる速度。これを現在情報通信機器等で広く用いられているシリコンCMOS集積回路で実現したことにより、将来的に安価に電器製品等に搭載して普及できる可能性が高くなったとしている。

 今回の研究成果により、テラヘルツ帯の高速無線通信が、情報通信ネットワークなどのインフラに使用される光ファイバに匹敵する毎秒テラビットの通信能力に近づいたことが示された。光ファイバは、遠く離れた通信衛星とのリンクを実現できませんが、テラヘルツ無線なら、通信衛星への超高速リンクも可能。これにより、例えば、飛行機のWi-Fi接続を大幅にスピードアップできるようになるという。

 また、情報サーバから携帯端末へのコンテンツ高速ダウンロードやモバイルネットワークの基地局間通信等にテラヘルツ無線を用いることが期待できる。さらに、テラヘルツ無線の新しい可能性の1つは、高速で遅延の小さな通信技術の提供である。ガラス製の光ファイバを伝搬する光の速度は大気中よりも遅くなる。そのため、リアルタイム応答を必要とするアプリケーションに光ファイバは向いていない。テラヘルツ無線は、大気中を光と同じ速度で伝わるため、リアルタイム応答を必要とするアプリケーションでの利用も期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)