驚くべき園児宣誓「問われる教育の中立性」

2017年03月04日 10:11

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文部科学省は、事実なら教育基本法を逸脱する疑いがあるとして、大阪府教育庁に対し、事実確認を求めた。是正指導する必要があるからだ

 大阪府豊中市の国有地払い下げをめぐり国会で連日取り上げられる大阪市の学校法人「森友学園」だが、教育内容についても、教育基本法が求める「教育の中立性」から国会で俎上にあがっている。特に、学園運営の幼稚園で行われた2年前の運動会で園児が宣誓した文言は衆参の予算委員会で問題だと野党議員から指摘された。

 『日本が他の国々に負けぬよう、尖閣列島、竹島、北方領土を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が心をあらため、歴史教科書でウソを教えないようお願いいたします』

 『安倍首相がんばれ、安倍首相がんばれ、安保法案、国会通過、よかったです』

 というのが、取り上げられている文言。安保法制で世論を2分し、国会紛糾後の、この文言。物事の判断ができない幼児に宣誓させるのは教育基本法が定める「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育、その他、政治的活動をしてはならない」との規定に照らし、政治的中立を逸脱しているのではないか、また、ヘイトスピーチにあたるのではないかということが議員から相次ぎ提起された。

 文部科学省は、事実なら教育基本法を逸脱する疑いがあるとして、大阪府教育庁に対し、事実確認を求めた。是正指導する必要があるからだ。

 大阪府教育庁私学課幼稚園推進グループは3日までに「幼稚園側から政治的中立性や差別的と疑われかねないことについて、今後、十分に配慮していく、旨の回答があった」と3日夜、弊社取材に答えた。「園は、意図はなかった、としている」と答えているという。

 園の回答を受け府教育庁私学課幼稚園推進グループは「フォローしていきたい」と今後、配慮した対応がなされていくかどうか、見ていく考えだ。

 一方、文部科学省からの事実関係照会では、国会で取り上げられた事実関係の確認要請だったとして「教育勅語の素読」などについては触れていなかったという。

 また筆者が驚いたのは、同園園児が「愛国行進曲」を歌っている映像がTV放映されたことだ。筆者はこのような皇国の歌が存在することすら知らなかった。調べてみると、この歌は「帝国永遠の生命と理想を象徴し、国民精神作興に資するもの」として1937年(昭和12年)に閣議決定され、太平洋戦争で占領政策を進めた日本軍が広めた軍歌だった。

 2番の歌詞は「起て、一系の大君を 光と永久に戴きて 臣民我等皆共に 御稜威(みいつ)に副(そ)はん大使命 往け八紘を宇となし 四海の人を導きて 正しき平和うち立てん 理想は花と咲き誇る」とあり、3番の歌詞には「大行進の往く彼方、皇国つねに栄あれ」と目的が「皇国」であり、覇権主義と「大日本帝国」(天皇国家)を鼓舞する唄そのもののように思われるものだった。

 こうした歌が戦前、戦中に歌われたことを理解できる年齢の学生に、歴史的背景と歌の関係を理解させる意味で教えるには意義があるのかもしれないが、歌の意味を全く理解できない幼児に、軍歌、それも政治的意味合いを持った歌を教え込むのは、教育基本法を逸脱した、思想教育につながるのではないかと筆者は感じてしまう。

 「国民主権」と「平和主義」「基本的人権の尊重」という現行憲法3原則の下で、国際社会との協調、平和国家、そして民主主義といった教育と相いれないのではないかと危惧を覚えるのは筆者だけだろうか。

 民進党の小川敏夫参院議員会長も2日の記者会見で、森友学園運営の幼稚園での教育内容に「物事の判断のできない幼児期に、特定の、かなり偏った思想に基づく教育をすることが良いのかどうか」と懸念を示した。

 「大きな問題があるのではないか」とも語った。歌の意味が全く理解できない幼児にこうした歌を歌わせることの影響をどう考えるか、文部科学省は大阪府教育庁と注視していくことが必要だろう。園は「今後は十分に配慮していく」としている。どのように修正していくのか、私立幼稚園の子育て支援と調査、指導にあたる府教育庁には、同園に対して教育内容の報告をしばらくの間、求めていくことが期待される。

 また安倍晋三総理夫人の昭恵氏は「2015年の同園講演で『こちらの教育方針は大変、主人もすばらしいと思っていた』と言っていた」とのこと(国会での質疑から)だが、幼稚園児や保育児童への君が代斉唱、小学校においては「君が代斉唱を、心をこめて歌えるように」指導することを義務付けた安倍内閣の考える『愛国心』育成教育の方向が、過度にすすめば、「教育勅語は素晴らしい」(高市早苗総務大臣)という閣僚もいる中、教育勅語素読や皇国の軍歌まで教えるような方向にいくのではと、今回の事案で危惧さえ覚える。そうした懸念が生じないよう、現行憲法遵守と教育基本法に基づく教育、政治的中立性の徹底を図って頂きたい。(編集担当:森高龍二)