東証1部、2部上場メーカー72社のうち、4割(32社)の企業が2017年1-3月(第4四半期)の想定為替レートを1ドル=110円に設定した。2016年10-12月(第3四半期)は1ドル=100円が最多(128社中50社)だったが、10円の円安に動いた。しかし、トランプ米国新大統領の就任後、外国為替相場は急激な円安から円高に振れているが、期初の想定為替レート「110円」を変えない企業も多く、不透明な先行きを様子見している企業が多いようだ。
東京商工リサーチでは、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機器メーカー(3月決算)のうち、2017年3月期決算の業績見通しで第4四半期(2017年1月以降)の想定為替レートを記載した72社を抽出した。資料は決算短信、業績予想等に基づく。
東京証券取引所1部、2部に上場する主なメーカー72社(3月本決算企業)では、2017年3月期決算の第4四半期(2017年1月以降)の業績見通しで、対ドル相場を1ドル=110円に想定した企業が32社(構成比44.4%)で最も多かった。次いで、105円が9社(同12.5%)、115円が6社、108円が5社と続く。想定レートの最安値は118円だった。 なお、期初時点では、対ドル相場を1ドル=110円とした企業が33社(構成比45.8%)で最も多く、次いで、105円が20社と続いていた。
第4四半期の想定レートと期初との比較では、期初の「110円」と変わらず17社(構成比23.6%)で最も多かった。次に、「105円から110円」に変更が8社(同11.1%)、期初の「105円」と変わらずが4社、「110円から100円」に変更が4社と続く。
2016年のドル円相場は、年初は1ドル=120円付近の円安基調で始まり、6月に英国の国民投票で「EU脱退」派が過半数を占めると1ドル=99円台まで円高に振れた。その後も円高基調で進んだが、米国大統領選挙でトランプ氏が勝利した以降は、一転して1ドル=118円台まで円安が進んだ。
為替レートで円高を見込んでいた上場メーカー各社は、急速に進んだ円安で業績を押し上げられた。しかし、米国新政権の保護主義的な姿勢の一方で、なかなか具体的な経済政策が見えず外国為替市場は急激な円安・ドル高の勢いは薄れ、円高に振れる傾向で進んでいる。
最近の外国為替市場は、米国新政権の政策運営やFRBの金融政策の行方を見極めようとする展開が続き膠着した動きになっている。このため米国新政権の打ち出す保護主義的な政策の出方によっては、今後の振れ幅が大きくなる可能性がある。
対ドル相場での円安の進行は、輸出関連の企業には業績上昇の追い風になるが、先行きの不透明感を打ち消せず楽観できない。また、中小企業には円安が輸入物価を押し上げ、コスト高を招く可能性も無視できない。
原材料価格の上昇を背景に鋼材、樹脂関連、紙などで値上げ品目も出てきたが、円安はメリットだけでなくデメリットを被るケースもあり、業種や規模でも明暗が分かれる。今後の為替相場の展開次第で、企業収益は大きく影響を受ける可能性もあり、しばらくは推移が注目されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)