大阪府豊中市の国有地が大阪市の学校法人森友学園に「想定外のゴミが出てきた」と8億円強の値引きで払い下げられた件で、契約前の経緯に関する資料を行政官庁が廃棄したことから、国有地払い下げをめぐる不可解な点の解明に学園の籠池泰典理事長の証人喚問が必要とコラムに書いたが、その証人喚問が意外な理由で23日に実施されることになった。
野党が連日のように籠池理事長の参考人招致を自民に求めていたにも関わらず「民間人は慎重に対応すべき」として拒否してきた自民党や政府が、あろうことか、籠池理事長が16日、小学校建設費用に安倍晋三総理から昭恵夫人を通して100万円を受けた旨の発言をし、テレビ中継された途端、菅義理官房長官が同日夕の記者会見で「総理に確認したところ、総理は自分では寄付はしていないと述べている」と完全否定。
さらに、菅官房長官は「首相は昭恵夫人や安倍事務所、第3者を通しても寄付はしていないと語っている。本来私人なので答える必要がないが、このような事態になっているので、念のため、昭恵夫人個人が寄付したかどうかについても、確認している」と説明した。
17日の記者会見でも「領収書などの記録もなく、昭恵夫人個人としても寄付は行っていないということであった、ということであります」と寄付がなかったと断じた。
自民党は真相解明より、総理の名誉が重要らしい。安倍一強を象徴する対応としか写らない。とはいえ、証人喚問で籠池理事長が真相を明るみにされることを期待したい。
筆者は籠池理事長の愛国心育成教育と安倍総理のめざす愛国心や道徳心育成の発想に類似を感じている。
開校に向けた寄付金活動に安倍晋三総理の名を冠したこと、昭恵夫人の名誉校長就任(問題発覚後、辞任)など、小学校開校予定地である国有地払い下げ先の学校法人と総理夫妻との関係性は保守的活動の中で同調している部分があったのではないのか。
改めてだが、何より驚くのは、学校建設費に安倍総理からの寄付金も入っていると籠池理事長が語った瞬間からの政府・自民党の素早い対応だ。参考人招致から一足飛びに「証人喚問」になった。
民進党の榛葉賀津也参院国会対策委員長は17日の記者会見で「総理の名誉に関わるから参考人招致でなく『証人喚問』とは、国民をばかにしている。国有地に関わる疑惑や国民の不満に答えず、総理に泥がかぶりそうになったら慌てて証人喚問。どちらを向いて政治をやっているのか」。多くの国民がそう思っただろう。
そして、自民・政府が証人喚問は安倍総理の名誉のためでなく、国有地を巡る問題の真相を解明するためだと主張するのであれば「籠池氏ひとりを証人喚問するのではなく、土地取引当時に理財局長だった迫田英典国税庁長官、近畿財務局長だった武内良樹財務省国際局長ら主な関係者を証人喚問しなければ全くの片手落ちと言わざるを得ない」。自民・政府はそこまで徹底して真相を国会で明らかにする覚悟を示すべき。(編集担当:森高龍二)