【今週の展望】欲得と不安と思惑が渦巻いて年度末は期待薄

2017年03月26日 10:39

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権利確定イベントの欲得にトランプ・ラリー突然終了による不安。そして企業や投資家の数々の思惑を乗せ、年度末は不完全燃焼のまま、過ぎていく?

 今週、3月第5週(27~31日)は5日間の取引。28日は3月期決算銘柄の「権利付き最終売買日」、29日は「配当権利落ち日」がセットの権利確定イベント。配当権利落ち分は約130円と推定されている。株主優待タダ取りの「現物買いと一般信用売りの両建て注文、現引き決済」のテクニックもひろく知られるようになったので、権利確定イベントでは空運や陸運、小売などのセクターは売買が活発になると予想される。アメリカに続きヨーロッパも26日に夏時間に移行し、日本との時差は英国、アイルランドは8時間、ドイツやフランスやイタリアは7時間になる。

 世界の主要株式市場の休場日は28日にインドネシアがヒンズー教の旧正月「ニュピ」で休場する。この国はイスラム教だけでなくバリ島のヒンズー教、仏教、キリスト教など少数派の宗教の祭礼も尊重している。

 国内の経済指標、イベントは、31日が月末の金曜日恒例の政府の経済指標の発表集中日。27日の日銀の「主な意見」も重要。

 27日には2月の企業向けサービス価格指数、29日には2月の商業販売統計(小売業販売額など)、31日には2月の有効求人倍率、労働力調査(完全失業率など)、家計調査(二人以上世帯の実質家計支出など)、消費者物価指数(CPI/2月全国、3月東京都区部)、2月の鉱工業生産指数、住宅着工件数が、それぞれ発表される。

 27日に平成29年度当初予算案が国会で年度内成立する。27日に3月15、16日に開催された日銀の金融政策決定会合と政策委員会の「主な意見」が公表される。28日は配当権利付き最終売買日。配当や株主優待だけでなく、3月期末の株式分割や増資など株式移動の恩恵を受けるには、この日が株式買付の期限。29日は配当権利落ち日。実質上の新年度相場入り。この日に売っても配当、株主優待は受けられる。6月の株主総会に出席して経営陣を質問責めにする権利も得られる。

 30日は「日ロ戦略対話」が開かれる。31日は政府が音頭をとる2回目の「プレミアム・フライデー」。年度末のせっぱ詰まった土壇場に「3時で仕事を切り上げて楽しみましょう」とは、ジョークとしては超弩級。4月1日の土曜日は年度初めで、富士重工業<7270>が「SUBARU」に社名変更する。正式にはローマ字なので注意。都市ガスの小売が全面自由化される。4月から雇用保険料は下がり、国民年金保険料は上がる。

 主要銘柄の決算発表は小売、外食などの2月期が本格化する。4月15日が東証の推奨期限なので、その前あたりがピーク。

 27日は大光など。28日はハニーズHD、ライトオン、ヒマラヤ、アークランドサカモト、ニトリHDなど。30日は夢の街創造委員会、ERIHD、ストライク、マルマエなど。31日はトライステージ、トシンG、スター・マイカ、ニイタカ、日本エンタ、USEN、ミルボン、宝印刷、象印マホービン、キユソー流通システム、タキヒヨーなど。

 新規IPOは今週7件。東京市場「春のIPOまつり」もいよいよ最終盤。30日に回転寿司大手の「スシロー」という大物があるが、それ以外の銘柄もなかなかの個性派揃い。

 27日にティーケーピー<3479>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で、貸会議室、ホテル宴会場、研修施設などを運営している。公開価格は6060円。不動産の付加価値を高めるという意味で、自ら「空間再生流通企業」と称している。

 28日にズーム<6694>がジャスダックに新規上場する。東京が本社で、音楽用電子機器の開発、販売を行っている。公開価格は1520円。本社は「楽器店の街」神田駿河台にあり、製品のユーザーは音楽のアマチュアからプロまで幅広い。

 28日にNo.1(ナンバーワン)<3562>がジャスダックに新規上場する。東京が本社で、OA機器、情報セキュリティ関連機器の販売と保守サービスを行っている。公開価格は1570円。ビジネスドメインは「オフィス環境改善」「業務効率向上」「経営環境支援」の3つ。名前負けが心配。

 29日にオークネット<3964>が東証1部に上場する。東京が本社で、インターネットを利用したオークションの主催、運営など情報流通支援サービス事業を行っている。公開価格は1100円。オリエントコーポレーションが設立した中古車のテレビオークションの会社が始まりで、花、二輪車、ブランド品、パソコン、医療機器などのオークションも運営。2008年10月に非上場化し今回は再上場だが昨年、上場が一度延期になっている。

 30日にユーザーローカル<3984>が東証マザーズに新規上場する。東京が本社で、ビッグデータの解析・人工知能による情報提供サービスを行う。公開価格は2940円。IT関連のIPOの中でもビッグデータ、AIという旬なテーマなので注目されそうだ。

 30日にスシローグローバルHD<3563>が東証1部に新規上場する。大阪府吹田市が本社で、「スシロー」のブランドの回転寿司チェーンを日本と韓国で448店舗展開している。公開価格は3600円。傘下の「あきんどスシロー」が2009年4月まで東証2部に上場しており、持株会社に変わっているが事実上の再上場。公開価格は仮条件の上限ではなく下限の3600円に決まって不安を呼んでいるが、「投資ファンドのEXIT案件」に対する偏見をどれぐらいはね返せるか?

 31日にネットマーケティング<6175>がジャスダックに新規上場する。東京が本社で、アフィリエイト広告を用いたマーケティング活動の戦略立案・運用支援などの広告事業、メディア事業を行う。公開価格は1140円。看板の恋愛マッチングアプリ「Omiai」は「出会い系(恋活)」としては日本最大級。「安心・安全な正しい恋」(?)をしているかどうかを24時間365日監視してトラブルを防ぐという。かりそめのアヴァンチュール(死語)は、みんな強制退会?

 海外の経済指標、イベントは、28日のCB消費者信頼感指数が重要。

 27日にはドイツの3月のIFO景況感指数、アメリカの3月のダラス連銀製造業活動指数、28日にはアメリカの1月のS&Pコアロジックケース・シラー住宅価格指数、3月のCB消費者信頼感指数、リッチモンド連銀製造業指数、29日にはアメリカの2月の中古住宅販売仮契約、30日にはアメリカの10~12月期のGDP確定値、31日には中国・国家統計局の3月の製造業PMI、非製造業PMI、アメリカの2月の個人所得、個人支出、3月のシカゴ購買部協会景気指数が、それぞれ発表される。

 29日にタイが政策金利を発表する。韓国政界のスキャンダルで手負いのサムスンがスマホの新機種を発表する。29日に英国がEU離脱を正式に通知する。この先、約2年にわたって離脱の交渉、手続が粛々と進められ、2019年には、まだ名前が欧州共同体(EC)だった1973年以来46年連れ添った欧州連合と〃熟年離婚〃するというスケジュール。

 アメリカの主要企業の決算発表は少ない。28日にダーデン・レストランツ、カーニバル、29日にペイチェックスが発表する予定。

 前週末24日の終値は19262.53円だった。そのテクニカル・ポジションを確認すると、主要な移動平均線のうち25日線と5日線はその上にあり、75日線と200日線はその下にある。25日移動平均は19369円で107円上、5日移動平均は19273円で11円上、75日移動平均は19226円で36円下、200日移動平均は17665円で1597円下にある。前々週末の17日と比べると25日線と5日線は下落し、75日線と200日線は上昇していた。