パネルディスカッションに登壇した委員長の髙田光雄教授(写真左端)。以下、研究委員の大久保恭子・株式会社風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし株式会社代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院助教授
アキュラホーム住生活研究所は昨年に引き続き、東京・文京区の「すまい・るホール」で「第3回 住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会シンポジウム」を3月29日に開催した。この会は現代の変化する暮らし方とそれに対応する住まいのあり方を考える会である。 今回はシンポジウム開催・研究レポートなどを通じて研究成果を広く公開する3回目の成果報告会だ。今回のテーマは「変わる暮らしと住まいのかたち」で、京都大学大学院の高田光雄教授・委員長以下6名の委員が登壇し、講演ならびにパネルディスカッションを行なった。
委員長は前述の髙田光雄教授、研究委員は大久保恭子・株式会社風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし株式会社代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院助教の計6名。
最初に髙田委員長が基調講演を行った。「変わる暮らしとは、環境問題・災害リスクの深刻化、少子高齢社会の進行、グローバリゼーションの進行などを意味し、これらの変化を受けて生活文化を再考するべきである。住まいの形はこのような環境の変化に対して個別に対応するのではなく基盤となる考えを持って考えていくべきで、その基盤とはもう言い古された言葉ではあるが持続可能性を持った、住まい・暮らしである。これからの持続可能な状況とは、飽きずに同じことを繰り返せることと言い換えることも可能だ。つまり循環という状態の中で続けていくことが重要である」と述べて「環境・社会・文化の観点からそれを考えていくとその可能性は広がっていく。ただしこの3つの持つ問題は必ずしも同じ方向を向いていないので、その相互関係を鑑みながら対処していく必要がある。震災や災害など予測不可能な環境の変化にしなやかに対応していくレジリエンス(回復力)を持つ住まいこそが重要となってくる」とコメントがあった。
この後、統計調査の発表、第一回と第二回のシンポジウムの振り返りがあり、休憩を挟み、パネルディスカッションが行われた。そこでは「これからは人の一生が長くなる社会、つまり長寿社会が出現する。そうすると生活単位が個人化する。個人化とというとバラバラになるというネガティブなイメージがあるがそうではなく個人が多様な関係を作れるということ」「テレビや新聞などでは、夫婦と子供2人の世帯を標準としているが、最早、それは標準でない」「消費社会の変容の局面のひとつとして快適性が求められる時代が到来している」「これからの一人住まいは、LDKだけでは語れない。お風呂が好きなら浴槽を、料理が好きならキッチンを、部屋の真ん中に配置したっていい」など示唆に富んだ発言が行き交った。
最後にジャーブネット主宰でアキュラホーム社長である宮沢俊哉氏が「これまで住宅は性能重視で丈夫で長持ち、快適といったことを目指してきましたが、今の時代それだけでは足りないのではないかと思います。我々は住まい作り企業から豊かな暮らしの作り手に変わっていく必要があるかもしれません。ただ、豊かな暮らしと言っても何を豊かと住まう方が感じるかを模索もしてもいます。時代はモノからコトへとも言われています。そこで我々も住まう方がどう生活シーンを作るのかというコトについて考えている最中です。この課題をなんとか形にしていきたいと思っています」と挨拶しシンポジウムは締めくくられた。(編集担当:久保田雄城)