ホンダと日本郵便は、これまで半世紀にわたって郵便配達に使用する二輪車の開発・運用で協力し、効率的な郵便配達業務の協力関係を築いてきた。
「郵政カブ」の愛称で親しまれた「ホンダMD90郵政機動車」は、ホンダ・スーパーカブをベースに、頻繁にゴー&ストップ繰り返す郵便配達に特化・専用チューンした郵政専用モデル。1971年に初めて郵便局に配備されて以来、日本全国で走り続けてきた。
ホンダによれば、「近年、地球環境への意識が高まるなか、限りある資源を有効に活用する循環型社会への移行、強化される排出ガス規制への対応など、地球環境に配慮した企業活動が求められている」としていた。
そのひとつの回答が2015年第44回東京モーターショー」でホンダがコンセプトモデルとして発表した電動モーターサイクル「Honda EV-Cub Concept」だ。
そのうえで、現行の二輪車「ホンダMD90 郵政機動車」に替わる電動二輪車を用いた郵便配達による社会インフラ整備に向けた「ホンダと日本郵便」協業の検討を開始し、覚書を締結。先般、電動二輪車の導入、充電ステーションなどのインフラ整備などの協業を発表した。
日本郵便は現在、郵便配達用二輪車を全国に約9万台配備している。そのバイクはすべてホンダ製であり、半世紀におよぶ納入実績をもとに、電動二輪車の導入でも協力することになったわけだ。
ホンダの開発に日本郵便が性能などの要望を伝えるほか、郵便局敷地内にバッテリー充電ステーションを設置、実証実験に共同で取り組む。また、郵便配達業務の効率化に向け、ホンダが開発しているテレマティクスサービス「Honda Biz LINC」の実証実験も行なう。
これはスマホやタブレット端末のGPS機能などを使った業務効率の向上や安全運行をサポートする取り組みだ。
ホンダの二輪部門担当である青山真二取締役執行役員は、「電動二輪車への取り組みは今後の大きな流れであり、グローバルな環境対策としてもホンダの大きなテーマ。技術面では(郵便配達などの)厳しい使い方にも性能を合わせることができるようになったし、コスト低減の面でもロードマップができてきた。9万台という規模は当社とっても世界最大規模のお客様。今回の協業は大きなチャンスをいただいたと思っている」と述べた。
今回発表した実証実験は、2018年中にスタートさせ、保守サービス体制なども同時に展開できる見通しだ。
一方、日本郵便の福田聖輝副社長は「配達用車両は排ガス規制などの法規制に対応する必要があり、積極的な取り組みが求められる。ホンダとの実証実験を通じて電動二輪車導入の可能性を検討したい。(郵便局に)設置する充電ステーションは、地域の人々が集う存在を目指したい」と語った。
電動二輪車は具体的に示されなかったが、2015年の「第44回東京モーターショー」でホンダがコンセプトモデルとして発表した電動モーターサイクル「Honda EV-Cub Concept」に準ずるものと思われる。9万台の郵便配達バイクが、ガソリン車から電動バイクに置き換わると、どれほどのCO2削減になるのだろう。まもなく、音も無く郵便配達バイクが街を走る光景が見られる。(編集担当:吉田恒)