国政から目を離してはならない

2017年05月07日 06:00

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安倍晋三総理が「自民党総裁として」と断りをつけたものの、改憲を目指す集会に寄せたメッセージで、改正憲法を2020年に施行したいとした「重大性」をすべての国民は見過ごしてはならない。

 安倍晋三総理が「自民党総裁として」と断りをつけたものの、改憲を目指す集会に寄せたメッセージで、改正憲法を2020年に施行したいとした「重大性」をすべての国民は見過ごしてはならない。

 自身の自民党総裁任期中に『憲法改正』を行うとの強いメッセージだ。その本丸が「憲法9条(戦争の放棄・戦力不保持)」にあること、2020年に改正憲法を施行したいと「期限を区切る」ことによる改憲議論の加速化狙いがある。

 加えて、安倍総裁の憲法観は立憲主義の立ち位置にないことが鮮明になっている。安倍総裁はメッセージで「憲法は国の未来、理想の姿を語るもの」と語り、時の権力の暴走を縛るため、憲法により国家権力を制限するものではないとの考えだ。

 安倍総裁の立憲主義の認識については、自民党の幹事長も務めたことがある自由党の小沢一郎代表がツイッターに「安倍総理は以前、国会答弁で『憲法で国家権力を縛るというのは絶対王政時代の旧い考え方』との珍説を披露した」と酷い認識だったとしている。

 そのため安倍総裁が「2020年憲法改正(施行)という目標を明言」したことには「冗談にもならない」と書き込んだ。

 「憲法改正云々言う前に、まず憲法と立憲主義の勉強を(すべきだ)」と。小沢代表は「このような総理の下での憲法改正は断固阻止しなければならない」と危惧した。

 憲法改正勢力が衆参ともに3分の2を確保しているうちに発議し、改正へ突破口を拓こうと2020年を目途に拍車をかけたのは、安倍総裁の戦略のひとつだろう。時間をかけ、現行憲法を静かに読み解く冷静さこそ必要だ。

 安倍総裁が急ぎたい改憲の本丸が憲法9条であることが改めて今回のメッセージは浮き彫りにした。安倍総裁は「9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと堅持していかなければならない」とし「9条1項、2項を残しつつ『自衛隊を明文で書き込む』という考え方は、国民的な議論に値するだろう」と自衛隊明記の考えを表明した。

 自民党の憲法改正草案では、9条2項を削除し「国防軍」を明記。3項では「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」と規定している。裏返しに『国民に国を守る義務を課す』規定になっている。

 安倍総裁の「9条1項、2項を残し、自衛隊を憲法規定に書き込む」提案は自民党内にもでていなかった新案のようだ。憲法9条を変える必要があるかどうかのNHK世論調査では必要は25%、必要ないは57%と圧倒的に、現行「9条」を支持する国民が多い。その抵抗感をかわすためのある種の安倍総裁の知恵なのだろう。

 日本共産党の志位和夫委員長は「総理の言う『9条に自衛隊明記』は自衛隊の存在を憲法上追認するにとどまらない」と警戒する。

 志位委員長は「安保法制でもなお一定の制約が残された自衛隊の海外での武力行使を文字通り無制限にすることに狙いがある。仮に2項が残されても空文化されるだろう。憲法9条を丸ごと死文化する改悪(になる)」と反対姿勢。

 社会民主党の福島みずほ副党首も「安倍総理は憲法9条1項、2項をそのままにして自衛隊明記という。自衛権も書くのだろうか。憲法9条で交戦権を否定しているのに、3項で認めることは全くの矛盾」と指摘。「安倍総理の憲法9条改憲、9条1項2項は残すと言いながら、3項で1項と2項を叩き潰す」とツイッター上で断じた。

 この指摘をどう受け取るかは我々国民1人1人が考えるべきことだ。ただ筆者は現行憲法下でも日米同盟関係を深化し、我が国の安全保障を確固たるものにしていくためとして「憲法9条を解釈改憲」し、自衛隊の活動範囲を相当に危険な任務にまで拡大したことやトランプ政権下で米国が軍拡路線へ転嫁か、といわれる動きに日本が巻き込まれる危険性が従前に比べ高くなっていると感じる。

 安倍総理は従前から日米同盟の片務性の完全解消や独立国として集団的自衛権行使がフルに行える権利を憲法規定に盛り込みたいと思っているのだろう。

 そのことで日米同盟が「血の軍事同盟」となり、集団的自衛権がフル行使できるようになれば「専守防衛」といいながら『あらゆる場面を想定し、安全保障環境の変化に対応する必要がある』として軍拡路線に歯止めがなくなり、米国と共に「いつか来た道」の罠にはまることにならないか、血の軍事同盟は「諸刃の剣(つるぎ)」になると危惧する。

 安倍総裁の発言で、2020年までの短期間に何が起こるのか。国民は安倍政権の下で動く国政から目を離してはならない状況に置かれている。基本的人権の尊重、平和主義、国民主権。3原則は日々の努力で保持しなければならない。それには子孫のために国民一人ひとりが国政に関心を持ち続け、時の政権が数の力で暴走しないよう、無関心にならないことだ。自らの判断で得る答えを選挙で示すこと。民主主義においては国民の権利であり、義務である。(編集担当:森高龍二)