働き方改革 オフィスから工場・店舗など多様な業務領域へ拡がる傾向に

2017年07月02日 15:17

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働き方改革はオフィスおよび社内システムの改革を中心に、徐々にではあるが実行されてきた

 日本社会は少子高齢化に伴う、生産年齢人口の減少を背景に、多くの産業において労働力不足が深刻化しつつある。また仕事と生活の調和(ワークライフ・バランス)の重要性も強調されるなか、労働生産性の向上とともに、効率的、かつ快適に働ける環境づくりが急務となっている。こうした環境づくりには、情報通信技術の導入が不可欠であるものといえる。

 矢野経済研究所では、働き方改革を目的とした業務効率化・生産性向上を実現する ICT(情報通信技術)を用いたソリューション・サービスや製品をワークスタイル変革(働き方改革)ソリューション市場と定義し、環境(ファシリティ・設備)、端末・デバイス、営業・プロセス・ワークフロー効率化、コミュニケーション・情報共有、人事・労務・総務関連などを対象分野として、分析した。

 これまで、働き方改革はオフィスおよび社内システムの改革を中心に、徐々にではあるが実行されてきた。在宅勤務やモバイルワーク(オフィス外での業務遂行)、フリーアドレス(個人用デスクのないオフィス環境)、クラウドサービスやファイル共有システムによるペーパレス推進、ビデオ・Web会議システムの導入による拠点間会議の実現など、主に改革対象は本社・拠点のホワイトカラーの業務であった。

 一方で、近年、働き方変革はホワイトカラーだけに留まらず、工場・店舗・コールセンターなどにおいても取り組みが進展している。例えば、製造工場においては、ウェアラブルカメラを用いたマニュアル自動作成システム、製造ライン状況の可視化、IC タグを活用した倉庫内運搬チェックシステムや、電子掲示板(デジタルサイネージ)を活用した社内広報や緊急情報など、従業員が個別にPC端末を持たない状況下での働き方における情報共有の在り方にも改革が進んでいる。

 その他、飲食業や小売業などの店舗においては、ビデオ・Web 会議システムを活用した店舗運営指導や店舗間コミュニケーションの活性化など、コミュニケーションと接客品質向上に寄与するソリューションが大きく進んでいる。

 ユーザー企業が業務効率化や省力化などを想定した働き方改革を行う場合、IT ソリューションの活用は不可欠である。一方で働き方改革はオフィス環境整備やシステム導入だけに留まるものではなく、そうした課題は当該ユーザー企業の働き方や組織・人事制度などに関連するものも多く、IT ソリューション提供事業者にとって既存の事業領域を超えるケースが多い。IT ソリューション提供事業者はユーザー企業の改革課題に対するコンサルティング能力に加え、オフィス家具・什器メーカー、ビデオ・Web 会議提供事業者、人材系事業者など、関連する外部事業者と連携した付加価値の高いソリューション提供を求められている。

 現下、政府のテレワーク推進や残業時間上限の法制化などを背景に、こうしたワークスタイル変革(働き方改革)関連ビジネスには今後一層、多様な業界からの参入が見込まれる。また IT ソリューション提供事業者自身においても、自社の既存事業と相乗効果の高い外部事業者と連携・協力を行うことで、従来の事業の在り方を転換させるイノベーション実現の契機になるものと考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)