鳥獣被害は人に危害を加えたり、列車に衝突したりとニュースで取り上げられることも珍しくなくなってきた。そんななか、ドローン型ロボットやGPSなどの技術を駆使した鳥獣害対策が注目を集め、今後の実用化に向け企業各社、各自治体の協力の下、研究が進んでいる。
近年、野生鳥獣による農作物被害額は毎年約200億円で推移しており、被害による営農意欲の減退、耕作放棄の他、車両との衝突事故、家屋や文化財の破損、希少植物の食害等、生活環境や生態系への被害も発生している。鳥獣被害は一昔前までは農村・山村の問題であったが、今や住宅地にも頻繁に出没し、人に危害を加えたり、列車に衝突したりとニュースで取り上げられることも珍しくなくなってきた。
平成25年12月には環境省と農水省が連携し、特に被害の大きいニホンジカやイノシシの生息数を10年後に半減する目標を設定。環境省では平成26年に鳥獣保護法を改正し、自治体が行う捕獲事業への支援を開始し、捕獲を行う事業者の認定制度を創設するなど、「捕獲対策の強化」と「捕獲の担い手の育成・確保」に取り組んでいる。
喫緊で問題を抱えているのはやはり、過疎化で人口が減少している農村地区。鳥獣害対策に割く人材の確保にも限界があり、その被害と対応に四苦八苦しているのが現状だ。そんな影響を受けて近年では、ドローン型ロボットやGPSなどの技術を駆使した鳥獣害対策が注目を集め、今後の実用化に向け企業各社、各自治体の協力の下、研究が進んでいる。
神奈川県では、全地球測位システム(GPS)で猿の群れの位置を把握、人里に下りてきたニホンザルを小型無人機「ドローン」で威嚇して山林に追い返すシステムを、安曇野市の無線機器製造会社「サーキットデザイン」が横浜市の電子機器商社と共同で開発している。最高時速約70キロであらかじめ指定されたコースを自動で周回飛行し、ニホンザルの群れをセンサーで感知すると、威嚇して人里を離れた山林へと誘導する。威嚇手段は「音波や低空飛行での接近など、なるべく猿がかわいそうでない方法」(開発担当者)を検討しているそう。
技術的な問題は以前に比べ格段に進歩してきているが、まだ問題が多いのが実情だ。特に野生生物の高い学習能力は高い障壁となっているようで、一度反応した仕掛けにも慣れてしまう可能性がある等、容易ではない。
開発担当者からは「里山の人口が減少する中、人と獣のすみ分けを維持する新たな手段になれば」など期待の声が挙がっており、技術力を駆使して自然との共生を図っている。本来動物は古来よりその土地に住んでおり、豊かな自然の象徴でもある。対立ではなく共生の道を模索し続けることは、後から住み着いた人間の責務でもあろう。(編集担当:久保田雄城)