少子高齢化によって労働力人口の減少が進むなか、健康寿命は延びており旧来の定年前後のキャリアに大きな変化が見られている。公的年金の受給開始年齢が60歳から65歳へと段階的に伸びており、60歳以降も働き続けることが当然となりつつある昨今では、今後の経済における持続的発展の為に、労働者が働きやすい環境を整え、これまで就労が難しかった女性や高齢者などを含めた働く意思のある中高年の労働力を確保していく事が急務とされている。
そういった中、定年前後の再就職の実態や60歳以降も働くための準備状況について、第一生命は「定年に関するアンケート調査」を実施。働く意志のある人が働き続けられる社会の構築について調査と考察を行った。
再就職をした60代女性において「専門的な知識・技能」(31.3%)と「幅広い知識・技能」(29.2%) の回答割合が女性の中では高く、再就職をしている人の特徴として、男女ともに既に獲得している知識や技能を活用して仕事を選ぶ傾向がみられた。定年退職前から一定の知識・技能を持っていることが必要であり、それらを前提として、定年後の就業を実現している。一方で、60 歳以降も働き続けるためには、まずは「体力・意欲・気力」が重要と思っている人が多いことも注目すべき点だろう。それらの維持にも工夫が必要と考えられる。
では、60歳を過ぎて職業生活を継続していくために必要なこととは何か。働き続けるために必要なこととして「身体的な健康・十分な体力」が、男女ともにいずれの年代も1位、定年後の継続就業には体力づくりが重要と認識している人が少なくないことがわかった。その上で、「仕事で活用できる資格を取得した」割合が男性20.5%、女性16.7%と、専門的ないし幅広い知識・技能の必要性を認識し、実際に知識・技能を身につけるための準備をしている人が多かった。
高齢期の就労が一般的な生涯現役社会に向かう中、新しいキャリアプランの練り直しが必要となっている。労働者側としては、早い時期から自らの知識や技能についての棚卸しなどを実施し、先を見据えた準備と行動が必要となる。一方で、企業側もかつての認識の是正が必要であり、今後は定年退職者の人材活用の方向性を検討し、女性の従業員に対しても、定年に向けた働き方についての情報提供を強化することも必要といえるだろう。(編集担当:久保田雄城)