原発存続か、原発ゼロ社会かの重要な選択選挙

2017年10月14日 08:14

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今回の選挙結果は今夏から始まっているエネルギー基本計画見直しのためのエネルギー基本計画審議会(総合資源エネルギー調査会基本政策分科会)審議にも原発の建て替えや新増設に積極的意見を有する委員らの発言力に影響を与えることになることが予想される。

 悲惨な結果を招いている東京電力福島第一原発事故から6年経ったが、ふるさとに帰れず、避難生活を余儀なくされている人たちは、今も8万人におよぶ。人的被害のみでなく、原発事故が地球環境や生態系にどれだけの被害を生むかはチェルノブイリや福島原発が実証している。

 それでも安全性は原子力規制委員会に担保させて、経済最優先で原発に依存し続けるのか、原発に終止符を打つのか。今回の選挙は「原発存続か、脱原発・原発ゼロ社会か」を選択する重要選挙になっている。

 自公が支える安倍政権の下、原発を電力供給の重要なベースロード電源と位置づけ、2030年に全エネルギーの20%から22%は原発が占める、と原発生き残りの道を作った。そのうえで、原発再稼働を推進している。電力業界、原発関連業界、日本経済団体連合会の要望に則したものだ。

 自民党は選挙公約でも「原発は重要なベースロード電源との位置づけの下に活用する」とし「原子力規制委員会に基準に適合すると認められた原発の再稼働を進める」と明記した。

 しかし、原子力規制委員会は「基準に適合しているかどうかを判断しているのであって、安全を担保しているものではない」と初代委員長の田中俊一氏が言い続けてきたとおり、基準に適合したからといって、あらゆる事態に原発が安全であるということを担保するものではないことを語っている。この認識こそが、まず、大事だ。

 安全神話を原子力規制委員会の認定に置き換えるような愚かなことはあってはならない。

 そのうえで、原発とどう付き合うのか,を判断すべきだろう。各党の姿勢は自民、こころが「原発再稼働推進」、維新は「原発再稼働には世界標準の安全規制と原子力損害賠償制度の確立、地元同意の法定化、原発再稼働責任法の制定」を条件にしている。希望は「2030年までに原発ゼロ」としているが「再稼働には条件付きで容認」の姿勢。公明も「住民の了承を得る条件付きで再稼働を容認」。目指す方向として「原発ゼロ」はあげている。

 原発ゼロに明確な姿勢を示すのは立憲民主、共産、社民の3党。立憲民主は「原発ゼロ基本法を制定」し、ゼロ実現へ着実に駒を進めるとしている。現状での再稼働に反対。共産と社民は再稼働自身認めない。もちろん原発ゼロを目指す。

 今回の選挙結果は今夏から始まっているエネルギー基本計画見直しのためのエネルギー基本計画審議会(総合資源エネルギー調査会基本政策分科会)審議にも原発の建て替えや新増設に積極的意見を有する委員らの発言力に影響を与えることになることが予想される。

 もともと、審議会メンバーに新増設や建て替え、原発維持を主張するメンバーが多数を占めている。原発を重要なベースロード電源とし、20%から22%は原発でと生き残りを決めたときの審議会メンバー18人のうち11人が今回の審議会メンバーにもそのまま横滑りした。

 メンバーの1人、一般財団法人・日本エネルギー経済研究所の豊田正和理事長は新増設を可能な限り早くするべき、と推進を提起。新メンバーの原発メーカー・IHI・水本伸子常務執行役員調達企画本部長は人材維持を理由に原発新設、建て替えを選択肢に入れるよう求める発言もしている。

 公益社団法人・日本消費生活アドバイザー・コンサルタント相談員協会常任顧問の辰巳菊子氏がほぼ原発ゼロでも日本では賄われているとして、近い将来に原発がなくなることが望まれていると主張している。

 選挙結果次第で、原発政策においても国民の指示が得られたとして、原発建て替えや新増設議論が活発になる可能性は否定できない。経産省は小幅改定の意向を示しているが、原発政策については世論が大きく分かれたままになっており、世論を意識しての対応とみるのが妥当だ。国民は原発の選択を迫られる選挙であることも認識し、一票を投じなければならない。衆議院議員選挙は22日投開票で実施される。(編集担当:森高龍二)