国際社会は、2001年に策定されたミレニアム開発目標“MDGs”を開発分野の羅針盤として、15年間で一定の成果を上げたが、その一方で、教育、母子保健、衛生といった未達成の目標や、サハラ以南のアフリカなど一部地域での目標達成の遅れなど、残された課題も多い。また、頻発する自然災害や環境汚染、気候変動に対応していくため民間企業やNGOなどの開発に関わる主体の多様化が推進されてきた。“SDGs”は、これらの世界的課題の解決に向け“MDGs”の後継として誕生した、新たな“持続可能な開発目標”である。
ミレニアム開発目標“MDGs”では、主に開発途上国のための目標であったのに対し、“SDGs”は格差の問題、持続可能な消費や生産、気候変動対策など、先進国が自らの国内で取り組まなければならない課題を含んだ、全ての国に適用される普遍的(ユニバーサル)な目標とされる。当然、日本も積極的に取り組んでおり、2016年5月20日には、内閣に持続可能な開発目標(SDGs)推進本部を立ち上げ、“SDGs”の議論や交渉への積極的貢献やSDGs推進本部の設置と実施指針の策定などの取り組みを行っている。
政府や一部の有識者の強い意気込みが感じられるが、一般の国民の意識はどうか。総合エネルギー・資源・素材企業グループJXTGホールディングス〈5020〉は、全国2,300人に対して、“SDGs”に関する「社会や自身の変化に求めることに関する意識」調査を行った。本調査では、そもそも“SDGs”を「聞いたことはない」と答えた人が85.0%と多数を占め、認知度の低さが目立った。
日本は島国(海洋)国家として「海洋資源や海の豊かさを守る」(79.3%)事への貢献が世界的に求められているようだ。一方でSDGsの目標について「日本は現在貢献していると思う」こととして、「安全な水とトイレを世界中に」(55.7%)、「質の高い教育をみんなに」(45.0%)など日本産の技術や製品、サービスへの信頼が挙げられた。「自分が現在貢献していると思う」ことでは、半数以上の人が貢献できていないと感じている一方で、今後「自分が貢献すべきだと思う」と答えた人は全体の74.7%となっており、回答率が高い目標としては、「すべての人に健康と福祉を」(55.5%)、「貧困をなくそう」(52.0%)、「人や国の不平等をなくそう」(51.8%)となった。
今後の目標とともに重要なのは現在である。現在、実感する社会問題は「自然災害の発生件数の増加」が約7割(69.9%)となり全年代で1位。年代別では雇用問題や貧富の格差に関する問題の実感値も上位にきており、格差の是正を含めた持続可能な経済サイクルやライフスタイルの確立は急務であると考えられる。
将来の日本に期待することを年代別にみると、全年代で「街がきれいに保たれ衛生的な生活がおくれること」が1位。2位は30~60代が「居住地の安全やインフラが保たれること」、20代のみ「各世帯の家族が必要な食料を確保できること」という結果になった。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震発生以降、現在も国家的な危機的災害の渦中にいる日本の対応が世界から注目されている。(編集担当:久保田雄城)