総務省が9月29日公表した労働力調査によれば、日本の製造業の1ヶ月当たりの雇用者は今年1月から8月までの平均で1003.8万人と1000万人代に回復した。
日本の製造業の月当たり雇用者数は2011年に998万人と1000万人を下回ってから減少傾向を続けてきたが、2015年に988万人と底を打った後、16年には999万人と増加傾向に転じ、17年8月には1002万人と1000万人を超えるレベルに回復した。
9月29日公表の厚生労働省の「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」を見ても製造業での求人数は8月の時点で97,305人と増加傾向にあり、現在、日本の製造業に国内回帰傾向が存在していることを示している。
製造業の中でも自動車などの輸送用機械や半導体製造装置などの半導体関連で求人の増加が目立っている。これはアメリカやヨーロッパでの緩やかな景気の回復とさらに円安傾向の進展によって輸出が増大しているためと考えられるほか、IoT関連など新しいIT技術の導入を伴う設備投資の増加が主要因としてあげられる。
これは単なる国内外の需要の増大という一時的な求人・雇用の増大ではなく、財務省の法人企業統計の国内外への設備投資動向から推測しても工場の国内回帰を期待させるものであると考えられる。
アジアを中心とする新興国の経済発展によって一時は人件費の観点から海外工場での生産にメリットがあったが、このところの円安と新興国での賃金上昇によって海外生産による財務上、労務上のメリットが減少してきている。
1980年代、日本の労働者の生活賃金が高騰する中で工場の海外流出という「産業空洞化」が懸念されてきた。そして1990年代から2000年代にかけてそれは現実のものになった。2000年代以降、日本国内においても工業製品の多くが「Made in China」などのアジアで生産された製品が多数を占めるようになった。
しかし、これらの新興国も経済成長に伴い、中国での不動産バブルにも見られるように、生活費賃金が高騰し、また円安傾向も相まって日本の労働者とアジアの労働者の賃金格差は縮小傾向にある。
さらに、このところの求人倍率の高騰に見られるように人手不足感から国内企業は正規雇用化にシフトする傾向を見せている。このため国内に生産拠点を回帰させる傾向が見られる。この傾向が続き、再び日本はハイテクを中心とする貿易立国に回帰しうるのか、今後の動向に注目したい。(編集担当:久保田雄城)