今、木造建築への関心が高まっている。木造住宅だけでなく、中高層の建築物や、保育所や小学校の校舎などの公共施設、病院などの医療施設や老人ホームなどの福祉施設など、需要の幅が広がっているのだ。
木材を利用した建築にはたくさんの魅力がある。まずは何といっても、木の香りや色合い、やわらかな手ざわりなどがもたらす、いわゆる「木のぬくもり」だ。日本人のDNAに刷り込まれた、木への安心感。日本人ならば誰しも、木造の建物に安らぎを感じてしまうのではないだろうか。そして最近、とくに機能面で見直されているのが、優れた調湿性と断熱性だ。木材は季節や環境に合わせて余分な湿気を吸収し、放出してくれる。エアコンに頼らなくても年間を通じて快適な屋内環境を維持できるのが木造建築の大きな特長だ。保育所や高齢者施設などで木造の需要が増えている大きな理由の一つでもある。
そして今、日本では建築用に適した木材が豊富に育っている。戦後の大規模な植栽計画によって育てられた樹齢50年以上の良質な国産材が、年間約5千万立方メートルにも及ぶ。ところが実際に建材や土木用に利用されているのは、その半分以下に過ぎない。まだまだ十分な供給が可能なのだ。
住宅メーカー各社も、木造住宅の販売に力を入れており、技術も大幅に進化している。
例えば、住友林業は、従来の木造軸組工法やツーバイフォー工法だけでなく、木造技術をさらに進化させた「BF(ビッグフレーム)構法」で安定した人気を維持している。BF構法は、日本で初めて梁勝ちラーメン構造を木造住宅で実現した構法で、主要構造材に独自に開発した、一般的な柱の5倍以上の幅と高い剛性を備える強靭なビッグコラム(大断面集成柱) を使用することで優れた耐震性を確保しながら、設計の自由度を飛躍的に高めた工法だ。
また、ツーバイフォー工法の三井ホームも近年、ツーバイフォー工法による高層階住宅や耐火中層建築物などの他、介護福祉施設などの大型建築物の施工でも実績を増やしており、都市部における住まいのニーズへの対応を強化している。
さらには、アキュラホームも、木造住宅の新しい可能性に挑戦している企業だ。同社が2017年9月に茨城県つくば市に竣工した支店オフィス棟「住まいと暮らしサロン」では、サスペンション梁と呼ばれる独特の形状の屋根を採用して話題になっている。サスペンション梁による屋根は、東西方向に吊屋根状の曲線をなし、小径4mのヒノキ製材を交互にずらしながらビス止めすることによって、せん断力を伝達できる構成となっており、風圧による吹き上げや、偏荷重に対する安定性が確保されている。また、斜め壁を耐力壁として設計することで、1階では7m×10m、2階では9m×14mの木質感溢れる無柱空間を実現している。同工法を用いることで、斬新かつ美麗な外観の提案も可能なので、公共施設や福祉施設などにも応用できそうだ。
木材の利用は住む人だけでなく、社会にも貢献する。木材の加工や製造エネルギーは、他の建材に比べて省エネでエコロジーだ。低炭素社会の実現に寄与するだけでなく、国内の林業をはじめとする木材産業の活性化、地域経済の復興にも役立つ。進化した木造建築ブームは日本の将来にとっても大きな光となるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)