昨今、様々な業界で「コンセプトモデル」という言葉を耳にすることが多くなった。コンセプトモデルとは、企業が通常の販売路線上にある製品とは別に、自社の目指す将来や技術の概念を示す目的で発表する特別なモデル商品のことだ。例えば、自動車業界やバイク業界では、モーターショーなどで量産車とは異なるモデルカーをコンセプトカーと称して発表している。
住宅業界でも今、そんなコンセプトモデルが注目を集めている。 一般的に販売している住宅商品のラインナップとは別に、自社のこだわりや強みを活かした住宅を提案する住宅メーカーや工務店、建築事務所などが増えているのだ。
大手ハウスメーカーのモデルハウスは、確かに内装や外装も豪華で、最新の設備が整っている。しかし、必ずしも中小メーカーや工務店などの住宅がそれに劣っているというわけではない。中小のメーカーや工務店の中には自社独自のこだわりや誇りを持って建築している業者も多く、大手ハウスメーカーに引けをとらない魅力を持った住宅も少なくない。ライフスタイルの多様化や高齢化の進行などによって住宅に求めることも千差万別な世の中だから、顧客のニーズに合わせた柔軟できめ細やかな対応ができるのも、地元の業者の強みといえるだろう。
例えば、愛知県の住宅会社・オカザキホームが岡崎市滝町に開発した「ルピナシティ滝町」は、発売前のプレオープンの時点で完売したことで話題となったが、こちらのコンセプトは「女性目線で住みごこちのいい家の提案が組み込まれ、本当に大切なもの、必要なものだけで、シンプルで洗練された空間をつくるミニマルスタイルの住まい」。土間続きで使い勝手のいい2WAYの玄関に設置したシューズクロークはベビーカーやスポーツ用品などをスッキリ美しく収納できるサイズ。また、玄関からキッチン、洗面脱衣室までぐるっと回れる「家事ラク動線」で、家事をスムーズにして主婦の負担を軽減する工夫など、住む人の「本当に必要なもの」が詰まった住宅となっている。同じような場所、大きさの住宅の相場から700万円程も高いモデルでありながら即売したということだ。また、こちらの住宅はシリーズ化も検討されているようで、さらに制振ダンパーや防犯ガラス、お掃除トイレ、木目の樹脂サッシなど、これからの暮らしに必要な設備もデザインも整った仕様になるようだ。
もちろん、大手ハウスメーカーもコンセプト住宅には力を入れはじめている。
住友林業が打ち出しているコンセプトハウス「和楽」は、木造住宅のトップメーカーらしく、木を中心に自然素材を組み合わせて造られた住宅で「日本の家が本来持つ素晴らしさを現代へ受け継いでいく住まい」をコンセプトに掲げている。
マイホームの取得を考えた時、何にこだわるか。値段や間取りはもちろん、最近は太陽光発電などの設備や災害対策も考えなくてはならない。一生に一度の大きな買い物だから、自身のライフスタイルや家族構成などからも、本当に必要なものを選ぶ必要がある。そんな時、住宅メーカーのこだわりが詰まったコンセプトモデル住宅は魅力的な選択肢になるのではないだろうか。(編集担当:松田渡)