京都大学とロームが国際無線通信規格 Wi-SUN FAN を搭載した小型 IoT 用ゲートウェイによるBluetooth搭載各種機器からの移動対応、広範囲情報収集システムの開発に成功。Bluetooth搭載のウェアラブルデバイスの可能性がひろがる。
スマートフォンの普及とともに認知が広まった「Bluetooth(ブルートゥース)」。iOS、Androidに関わらず、すべてのスマートフォンが共通して実装しているお陰で、今や小中学生でも知っている近距離無線通信技術の代表格となった。
無線通信で混同されがちなのが、Wi-Fiとの違いだ。搭載機器が勝手に使い分けてくれるので一般的な利用者がとくに意識する必要はほとんどないが、同じ無線通信でも、その利用用途が大きく異なることくらいは知っておきたい。
まず、Wi-Fiの大きな利点は、スマホをはじめ、パソコン、プリンタ、テレビなど様々な機器を一度に接続できることだ。しかも通信速度が速いので、写真や動画など、大容量のデータでも多量かつスムーズに送受信することができる。
一方Bluetoothは1対1の無線通信が基本となる。通信可能距離も10m程度が推奨されており、通信速度もWi-Fiに比べてかなり劣るため、大容量のデータの送受信には不向きだ。しかし、Bluetoothには「消費電力が少ない」という最大のメリットがある。スマホでWi-Fiを使うと電池残量がぐんぐん減ってしまう経験は誰しもあるだろう。でも、Bluetoothなら電池消費は少ない。だから、イヤホンやキーボードなど超近距離で長時間使用するようなものには最適の無線通信技術だ。
また近年では、IoT(モノのインターネット)やウェアラブルデバイスにも欠かせない無線通信技術として、Bluetoothへの注目が高まっている。家庭内を便利で快適にするだけでなく、医療分野や産業分野、健康市場などではデータを収集して活用するのにも、省電力で手軽なBluetoothの役割は大きい。ところがBluetoothをもっと便利に活用するためには、大きな壁があった。それがペアリングの問題だ。
ペアリングとは、Bluetoothデバイス同士の接続設定のことだ。Bluetoothを使ってデータを送受信し合うためには、最初にお互いのペアリング情報を登録しなければならない。一度ペアリングしてしまえば、二回目以降の接続時にはペアリングの必要はないが、もしも記憶させたペアリング情報が消えてしまった場合には、再度設定が必要となる。一回の接続設定は簡単なものだが、チリも積もればなんとやらで、何度も再接続設定を行うのは、なかなか面倒なものだ。とくに、病院や工場などの大きな施設間で利用者がデバイスを持って移動するような場合や、ウェアラブルで計測データを収集したいような場合は、移動の度に移動先の通信機器(IoTゲートウェイ)に再接続する必要があるため、すこぶる不便だ。
そんなBluetoothのペアリング問題を劇的に改善してくれそうな最新の通信システムの開発に成功したことを、京都大学と電子部品大手のローム株式会社が10月19日に発表した。
同通信システムは、京都大学大学院情報学研究科原田博司教授の研究グループとロームの研究グループが、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として開発したものだ。国際無線通信規格Wi-SUN FAN及びBluetooth搭載IoTゲートウェイを複数用いて、Bluetooth通信に必要となる認証情報を長距離通信が可能なWi-SUN FANによりゲートウェイ間で共有することによって、一つのIoTゲートウェイに接続すれば、認証情報が共有されているすべてのIoTゲートウェイに再認証なしに接続可能となるものだ。これにより、利用者が移動しても広範囲でBluetoothによる情報収集ができ、環境・生体信号などを同時にクラウド上に整備された超ビッグデータの創出基盤上に伝送できることが確認されている。
便利なだけでなく、様々なデータを収集して活用することができれば、世の中はもっと便利で快適になるだろう。Wi-SUN FANなどとの連携によって、Bluetoothの可能性はまだまだ広がりそうだ。