日本は未だ製造業の貿易国家である。自動車、スマホのみでなく、現在急成長しているものが半導体製造装置であり、その貿易相手国は中国や韓国、アジアであり、日本産業なしでは世界経済の成長無しという地位にある。これは一つの安全保障になり得る。
9月29日、経済産業省は8月の鉱工業生産指数(速報)を公表した。調査の結果、指数は2010年を100として前月比2.1%の103.6となり、鉱工業生産が引き続き上昇傾向を維持していることを示している。経産省の基調判断は昨年11月からの「生産は持ち直しの動き」と判断を据え置いた。
堅調な上昇基調の背景には自動車や半導体関連などの輸出が牽引役になっているほか、設備投資に関連したクレーンや半導体製造装置も大きなウエイトを示している。業種別に見てみると全15業種のうち11業種で前月比が増加になっている。中でも好調なのは半導体製造装置や運搬クレーンなど設備投資用の汎用・生産用・業務用機械工業だった。生産・出荷を牽引した輸出関連ではアジア向けの輸送用機械の部品が、北米・ヨーロッパ向けでは輸送用機械の完成車が大きく寄与しているという結果になった。
中でも注目に値するのは半導体製造装置で、その年成長率は13.0、寄与率は23.6%と最も高い数値になっている。この半分以上は国内向けの設備投資用だが、直近5年ほどで台湾、中国、韓国を中心とするアジア向け輸出が大きく伸びを示している。その伸びは2012年を100として台湾が288.0、中国が224.2、韓国が179.5という大幅な増加トレンドを実現している。
この背景にはスマートフォーンの発展普及などに伴うIoT(インターネット・オブ・シングス)用のエッチング装置の需要が国内外ともに急増している一方、供給力が追いつかず、この分野に強い日本の半導体製造用装置に需要が集中しているためと考えられる。
近年、IoTが重要視されるようになったが、今のところ日本の半導体製造装置なくしてIoTその他のIT関連機器は世界的に生産不可能と言っても過言でないだろう。
11年の東日本大震災の時に世界の自動車や電子機器の工場が稼働できなくなったことは記憶に新しい。世界各国が救援・復興に向けて最大限の協力をすると表明した。米空母3隻もが日本のために西太平洋上に展開したことはご存じであろう。
国防のため必要最小限の軍事力の備えをすることは当然である。現代はグローバル経済の時代である。スマホを生産するためには140カ国以上の国の円滑な貿易が必要である。そうした時代の中で日本のハイテク産業が世界の中で高いプレゼンスを示し、日本産業が無ければ世界の経済は破綻するという地位を維持することは安全保障上も重要であると考えられないだろうか。(編集担当:久保田雄城)