TDKが画期的な小型全固体電池を量産化。EV用途など大容量は、まだ先

2017年12月02日 07:29

TDK_Ceramic_Battery

世界初の充放電可能なSMDタイプのオールセラミック固体電池「CeraCharge」量産化、サイズは4.5×3.2×1.1mmと小さい

 TDKが21日、世界初の充放電可能なSMDタイプのオールセラミック全固体電池「CeraCharge(セラチャージ)」を開発したとして、ちょっとしたニュースとなっている。

 「CeraCharge」は、セラミック材料を積み重ねて作るタイプのバッテリーで、2018年春ごろを目途に量産を開始する。

 全固体電池は、「次世代電池」として幅広い業界で全固体電池の開発が加速している分野だ。TDKは、早期量産化で業界の需要に応えるという。

 現在、世界的に普及するリチウムイオン電池は、液体の電解質を使うため、いくつかのニュースで報道されたように、電車の中でバッグの中に入っていた電池が燃えるなどの危険性が指摘されていた。

 CeraChargeは電解質としてセラミック固体電解質を利用する。MLCCのような積層技術をベースに製造されており、この技術により、従来型の充放電可能なリチウムイオン電池と同等の高いエネルギー密度と最小サイズを実現した。同時に、セラミック多層コンポーネントによる安全性と大量生産の利点を併せ持ち、液漏れや発火などの恐れがなく安全性が高い。

 CeraChargeは当面、小さなIoT機器や高い安全性が求められるウエアラブル端末などの利用を想定。小電力で駆動するリアルタイムクロックや近距離無線通信「Bluetooth」発信器などの電池として使用することになりそうだ。

 全固体電池は、これまでのリチウムイオン電池の次世代技術として大きな注目を集めている。電気自動車を主用途とする大容量タイプから、コイン電池などに代替する小容量型まで、幅広い用途で開発が進む。今回TDKが量産するのは小容量品である。

 来春、市場投入する製品の外形寸法は、4.5×3.2×1.1mmと小さい。出力電圧は定格1.4V、容量は標準100μA時だ。放電電流は標準20μA。充放電回数は最低1000回で、動作温度範囲は-20~+80℃だ。

 全固体電池は、エネルギーをためるエネルギー密度が、液体電解質のリチウムイオン電池よりも高いとされる。また、充電時間も短く分単位だという。容量も大きく高速充電の可能性も高まる。

 ただ、電気自動車(EV)向けなど大容量型の固体電池実用化はこれからだ。EVに搭載する、これまでのリチウムイオン電池には寿命や充電時間で限界がある。全固体電池の早急な開発で、電池の寿命や充電時間の改善を図らないと、EVへの普及は難しいというのが大方の見方だ。

 2~3年で取り替えるスマートフォンと違って10年という長いスパンで使うのがクルマだ。現在のリチウムイオン電池に変わるポテンシャルの高い蓄電池として、自動車メーカーも全固定電池開発に取り組んでいる。トヨタ自動車は開発を加速させて、2020年代前半の採用を目指しているという。(編集担当:吉田恒)