2017年、米国内の新車販売が縮小に転じた。米調査会社オートデータによると、2017年の米新車販売台数(商用車を除く)は、2016年比1.8%減の1723万0436台だったという。2008年のリーマンショックで大きく落ち込んだ新車販売は、その後の新手の自動車ローンなどの設定など販売促進策が奏功して販売を押し上げた。しかし、その買い替え需要が一巡し、8年ぶりに前年を下回った。
日本の自動車メーカーの主戦場・収益源でもある米国市場で2017年、一昨年からの販売トレンドの変化が顕著になった。原油安などの影響でSUVやピックアップトラックなど大型車の新車販売比率が6割を超え、日本メーカー各社が得意とするC・Dセグメントのセダンやハイブリッド車など中小型車の販売は2016年に比べて1割以上減少した。ハイブリッド車など燃費の良さで販売を伸ばした省エネ車の市場も全般的に縮小しており、自動車各社は対米国市場でのマーケ戦略の見直しに追われている。
日本メーカーが不調な理由は、とにかく大きなフルサイズSUVやピックアップトラックなど「ライトトラック」と米国内で呼称する“まったくライトじゃない”大型車の販売が伸びる一方で、セダンや小型車など中小型「乗用車」が減ったためだ。両者の比率は2013年にはほぼイーブンだったが、以降ライトトラック系の伸長が著しく、2017年は遂に全体の3分の2に迫る勢いとなった。
こうした米市場独特な“ガラパゴス”ともいえる米新車販売トレンドは、グローバルな新車販売傾向とはまったく連動していない。米市場では、ここ数年、ガソリン安で低燃費を売り物とするセダンなどの乗用車は売れず、販売台数が2016年比で10.9%減少。日本車の販売台数も7.5%減った。消費者の嗜好が、まるで「デカく、偉そう、燃費なんて気にしない」1970年代の米国消費者性向に回帰したような様相だ。
トヨタの世界販売台数の約3割は北米で占めており、輸出分を含めれば営業利益の実質4割を稼いでいるとされる。日産やホンダも2017年3月期に営業利益の4~5割を北米で上げている。
日本メーカー各社は、米消費者の嗜好の変化への対応は急務だとして投資を急ぐ。
トヨタは2018年にメキシコの工場に投資し、ピックアップトラック「タコマ」を増産する計画だ。2019年に稼働させるメキシコの新工場でも生産車種を「タコマ」に切り替える。
日産は売れ筋のフルサイズSUV「アルマーダ」の日本から米国への輸出を増やしている。「アルマーダ」を生産する日産車体福岡工場ではフル操業が続く。しかし、なお受注に応じきれないため、2017年10月に同社の神奈川県の工場でも生産を始めた。
ホンダは北米の工場で生産車種の見直しを進め、2018年からはアラバマ工場でピックアップ「リッジライン」を増産する。
2017年、米景気は堅調だったが、自動車市場では、リーマンショック後、ここ数年の過剰な販売競争の末、割安な中古車が出回り、新車需要を圧迫する構図が強まっている。米金融政策は引き締め方向に転じており、自動車ローンを通じた販売収益が全般に悪化する恐れもでてきた。また、2007年の住宅ローンにおける「プライムローン」破綻のような社会現象を懸念する声もある。(編集担当:吉田恒)