自動車がさらに進化するかも? ノイズ対策を不要にする、日本のアナログ技術

2017年09月24日 15:25

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日本国内の新車販売台数(登録車)は233810台で、前年同月の223273台に比べ、4.7%増加している

 日本自動車販売協会連合会が発表した2017年8月の新車販売台数の速報によると、日本国内の新車販売台数(登録車)は233810台で、前年同月の223273台に比べ、4.7%増加している。また、2017年8月までの累計は2320577台で、前年同期2146901台と比較して8.1%の増加となった。ブランド別では、トヨタが104397台で44.7%のシェアを占めて圧倒的なトップの座に君臨しており、次いで日産が27854台で11.9%、ホンダが25533台で10.9%のシェアで拮抗している。

 事業規模もさることながら、売上高の増加額においてもトヨタは日本一を誇る。10年前と比べ、売上高が50%以上も増加しているのだ。これが新進の企業ならともかく、ご存知の通り、同社は10年前の当時も日本のトップ企業なのだから、驚異的としか言いようがない。これは同社が成熟した大企業ではなく、未だ成長途上にある活気ある企業である証だろう。

 しかも、トヨタは日本国内だけではなく、海外市場でも自動車生産・販売台数を大きく拡大している。

 同社の原動力となっているのが「プリウス」に代表されるハイブリッドカーだろう。1997年に発売された初代「プリウス」は、ハイブリッドカーの先駆けとなって、世界中で話題となった。また、それまでガソリン主体だった自動車業界に「電気」が持ち込まれたことにより、自動車の電装化を急速に進展させるきっかけを与えたのではないだろうか。

 事実、この10年ほどの間に、自動車は驚くべき進化を遂げている。燃費改善や安全機能、そして話題の自動運転機能の実現には、温度や加速度、電流などの内部状態を管理するECU(Electric Control Unit)や各種センサが欠かせない。ところが、近年の車載電装システムが高密度化、複雑化するにしたがって、ある問題が表面化してきている。その問題とは「ノイズ環境の悪化」だ。センサなど微小な信号を扱うデバイスにとって、ノイズは大敵だ。

 しかし、自動車開発において、ノイズ対策評価を個別に行うことは難しく、組み立て後の評価となる。その為、万が一にもその評価が不適格になってしまうと、大きな修正を余儀なくされることとなるので、ノイズ対策設計には細心の注意が必要だ。つまり、自動車の電装化が進めば進むほど、ノイズ対策設計にはより多くの時間と労力が費やされることになる。

 ところが、この課題を一気に解決しそうな画期的なノイズ対策製品を、日本の電子部品大手のロームが開発した。同社が9 月12日に開発を発表した車載オペアンプ「BA8290xYxx-C シリーズ」は、ロームの「回路設計」「レイアウト」「プロセス」、3 つのアナログ技術を融合して開発されたもので、全周波数帯域でのノイズの影響による誤差(出力電圧変動)が一般品±3.5%~±10%に対して±1%以下という圧倒的なノイズ耐量を実現したオペアンプだ。同製品を用いれば、ノイズの影響を受けずに信号増幅できるため、従来、複数の外付けノイズ除去フィルタ(CR フィルタ)を用いて対策していたノイズ対策設計が不要になるので、システムの設計工数が大幅に削減されるだけでなく、システムの高信頼化にも大きく貢献する。

 車載センサアプリケーションのノイズ対策設計を不要にするオペアンプは世界初。同社のアナログ設計技術や独自のバイポーラプロセスなど、垂直統合型の生産体制による賜物だ。

 このまま自動車の電装化が進めば、全自動運転の自動車が登場するのも、そう遠い未来ではないだろう。実際、自動車業界トップシェアのトヨタは1990年代から、交通事故死傷者ゼロの社会を目指して、全自動運転技術の開発に取り組んでいるし、すでに半自動運転技術は確立されつつある。センサの大敵であったノイズ対策の負担が軽減されることで、自動車はまた一つ、大きな進化の一歩を踏み出したのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)