現在、米欧中の景気回復を受けて世界経済は緩やかな回復局面にあるとされる。しかし、世界的に実質賃金の伸びは低水準で推移しているようだ。日本においても政府統計によれば2017年10月の実質賃金の対前年伸び率はマイナス0.12%と実質賃金低下の状態が続いている。
コーン・フェリー・ヘイグループは自社が保有する世界の報酬データ(110カ国以上の2万5,000社)をもとに2018年の世界の実質昇給率について予測を行い、 「2018年度世界の報酬動向」調査としてその結果を公表した。これによると、18年の実質昇給率の世界平均は1.5%の上昇となり、17年の同予測値2.3%、16年の2.5%と比較して低下すると予測されている。
地域・国別に内訳を見ると、アジア地域での平均は、昇給率予測が5.4%、インフレ率が2.6%でインフレ調整後の実質昇給率の予測値は2.8%となり、17年の同予測値の4.3%よりも1.5ポイント低下している。この中で日本は昇給率とインフレ率、実質昇給率ともに最小の値を示し、実質昇給率は1.6%の予測となっている。17年の同予測値は2.1%であったので18年は5ポイント減速することになる。アジア地域で最も高いのがインドで実質昇給率が4.7%で17年に比べ0.1ポイント低下している。中国は4.2%で0.2ポイントの低下である。
西ヨーロッパの平均は実質昇給率が0.9%で前年の値1.7%より8ポイント減少している。この中でイギリスがマイナス0.5%となっており、本レポートではBrexitに伴う不確実性のためと分析されている。北米地域での実質昇給率の平均は1.0%で17年に比べ0.5ポイント低下。米国は1.0%で前年より0.9ポイント低下すると予測されている。
東ヨーロッパ平均では実質昇給率1.4%で0.7ポイント減少、中南米では2.1%で1.0ポイント減少、中東では0.9%で1.6ポイント減少、アフリカでは1.7%で1.0ポイント減少、オーストラリアとニュージーランドの太平洋地域では0.7%で1.1ポイント減少と18年の実質昇給率は全ての地域平均で減速傾向となっている。
景気回復の中、企業が収益を上げているにもかかわらず十分な昇給を行わない背景は様々考えられるが、実質賃金の伸び悩みは消費を抑制し持続的回復の妨げとなることは間違いない。日本の経済界は18年の賃上げについて前向きに検討すると表明したが企業側の努力に期待したい。(編集担当:久保田雄城)