活況の電池市場。1次電池も新技術・新製品の投入で需要増に期待

2018年01月21日 14:26

ローム

ロームが開発した昇圧DC/DC コンバータ「BU33UV7NUX」。業界最小クラスの低消費電流で、リモコンなどの乾電池を従来品に比べて1.3 倍長持ちさせることに成功した。

 スマートフォンやウェアラブル機器、パソコンなどを始めとしたモバイル機器の爆発的な普及に伴って、リチウムイオン電池(LiB)など充電可能な2 次電池の需要が拡大している。

 しかし、その一方で、乾電池をはじめとする1次電池の需要も堅調だ。

 富士経済の調査によると、1次電池の世界市場は、2020年には1兆1323億円に伸長すると予測している。その大きな要因として挙げられるのは、新興国での需要だ。新興国ではマンガン電池からアルカリ電池へのシフトが継続しており、今後も需要増が見込まれている。また、日本でも防災意識の高まりなどから、乾電池は緊急時用の買い置き需要が伸びているようだ。

 パナソニックも、今年3月に創業100周年を迎えるにあたり、その事業目標として乾電池の累計生産2000億個を目指すことを公言し、同社の乾電池の製造拠点である、大阪府守口市の工場はもとより、タイやインドなどの海外工場の生産拠点も強化している。また、昨年4月には9年ぶりとなる新製品「EVOLTANEO(エボルタネオ)」を発表。同製品は材料、工法、構造の全てを技術革新したことで「長もち」、「長期保存」、「液もれ防止性能」の全てで性能アップに成功し、全ての電流域で同社史上No.1の長もちを実現。これまでの「EVOLTA」に比べ、長もち性能が約10%もアップしている。また10年保存後の長もち性能も約20%アップしているほか、新開発の「液もれ防止製法 Ag+」により、過放電後のガス発生量を約30%削減することに成功した。

 また、FDKも昨年、電池事業の拡大を図るため、アルカリ乾電池製造子会社であったFDKエナジー株式会社を吸収合併しており、アルカリ乾電池、ニッケル水素電池、リチウム電池の各事業を一体化することで電池をコアとしたビジネスモデル構築を加速させている。

 乾電池市場を取り巻く動きは、電池メーカーだけに留まらない。

 電子部品メーカーのロームは昨年末、電子辞書や家電のリモコン、玩具など、乾電池で動作する電子機器向けに、業界最小クラスの低消費電流を実現したMOSFET 内蔵昇圧DC/DC コンバータ「BU33UV7NUX」を発表している。同製品は、乾電池1~2 本の入力電圧(1V~3V)に対し、マイコンの駆動に必要な3.3V を出力する昇圧タイプの電源IC で、乾電池アプリケーションの長時間動作に向けて低消費電流化を突き詰めたことで、機能同等品で業界最小クラスとなる消費電流7μAを実現した。アルカリ乾電池2 本で駆動するリモコンの待機時(負荷電流50μA)を想定したときに、一般品と比較して約1.3 倍、175 日も長持ちさせることが可能だという(同社調べ)。

 近年、リモコンへの液晶搭載やアプリケーションの高機能化などが進み、搭載される電源IC の省エネ性能もますます求められるようになっている。EVOLTANEOのような高性能乾電池と、「BU33UV7NUX」のような高機能電源ICを組み合わせることで、飛躍的な長持ち性能が見込めるだろう。成熟市場と見られがちな1次電池市場だが、日本企業の技術力によって、まだまだ大きな可能性が広がりそうだ。(編集担当:松田渡)