実質賃金2年ぶり低下、物価上昇に追いつかず

2018年02月22日 08:24

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2017年の実質賃金が2年ぶりに低下した。賃金そのものは上がっているものの、原油高などによる物価上昇に追いついておらず、それが実質賃金の低下につながっているとみられている。

 景気拡大といわれながらも、その実感が乏しいという人も少なくない。景気拡大を実感できないという人が多いということを裏付けるデータが厚生労働省から発表された。このデータは、厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査であり、この調査によると物価変動の影響を差し引いた2017年の実質賃金が2年ぶりに低下したことが明らかとなった。

 物価変動は様々な要因で起こる。たとえば2017年は世界的な原油高により物価が上昇した他、ガソリンや電気料金といったエネルギーに関する料金についても上がっている。また、税金についても同様に酒税法改正の影響から酒の料金も上昇し、消費が落ち込んだ年といえる。商品の小売価格の変動を示す消費者物価指数は前年比0.6%の上昇となっており、このことからも物価が上がっていることがわかる。もっとも、景気拡大によって労働者の賃金についても上がっていると考えることができる。ただし、労働者一人あたりの平均給与総額は前年比0.4%の増加に留まっており、物価上昇に賃金の増加が追いついていないということになる。

 景気拡大は世界的なものであり、その恩恵を日本企業も受けているものの、平均給与総額の増加が鈍い背景には、人手不足による正社員化とパート労働者とのバランスによる関係が大きい。実際のところパート労働者の賃金については前年比2.4%増加という数値となっているものの、正社員化も同時に進んだことから平均給与総額が相殺された形となったといえる。物価が上がればそれだけ消費も低下することになり、それに加えて賃金についても微増という状態ではますます消費が落ち込むことは言うまでもない。

 日本の企業は上場企業を中心に業績が好調であるところが多く、利益についても過去最高益を達成したところも少なくない。また、この業績好調は海外の国でも堅調な成長を続けていることからまさに世界的な景気の拡大という状況となっている。しかし、日本に関しては物価が上昇しながらも実質的な所得は減少しているため、国民の生活については決して楽な状態とはいえない。また、個人消費が低迷すればそれも経済全体に及ぼす影響は大きなものとなる。経済全体のことを考えれば個人消費を回復させることは重要な要素といえるだろう。そしてそのためには物価上昇の現状に即した賃金の増加は欠かせないポイントとなる。(編集担当:久保田雄城)