仏・自動車大手のルノーの取締役会は2月15日、カルロス・ゴーン氏をCEO(最高経営責任者)に再任し、続投させると発表した。一時、ゴーンCEO退任説すら噂された人事は、ルノーの筆頭株主である仏政府の影響力が何度も話題になった。自国経済への配慮を求める仏政府が発言力を増せば、日産や三菱自の経営の独立性に影響する恐れもあった。が、結局のところ取締役会は、ゴーン氏の指導力に今後4年間の経営を委ねる判断を下した。
ただ、取締役会はナンバー2の最高執行責任者(COO)のポストを復活、これまで商品開発などの最高競争力責任者ティエリー・ボロレ氏を充てるとした。
また、ゴーン氏はCEO続投の条件として、ルノーでの業務が変わるため、約700万ユーロ(2016年実績)といわれた高額報酬報酬の3割カットに合意したという。
仏政府は今回、今年6月のルノー株主総会での取締役の改選にあたり、経営陣の若返りを求めていたとされる。ゴーン氏は、仏政府からCEO続投への了解を得るために、3社アライアンスの方針などで大幅な譲歩を迫られたと見られる。アライアンスは、これまでと異なった経営環境でスタートを切ることになるやも知れない。
ルノーのCEO再任が決まったカルロス・ゴーン氏は、2月16日の会見で、「ボロレ氏がルノーの経営全体に関わり、私の関与度が下がる」と述べた。その一方で、日産や三菱自との連合強化のため、組織を見直す方針を示した。
具体的には明らかにしなかったが、日産とルノーとの資本関係の見直しなどが含まれる可能性もある。
1999年に資本提携したルノーと日産は、アライアンスによって2014年に研究開発や購買など主要4部門の機能を統合し、ひとつの会社であるかのような状態にまで関係を深めた。どちらか一方が資本の論理で支配するのではなく、独立した企業が経営資源を補い合う「緩やかな連携」を、ゴーン氏が両社のトップを務めることで実現してきた。
仏ルノーの業績は、連結会社の日産が支える逆転現象も生じている。加えて、2016年に日産が三菱自を傘下に収めたことで、長くルノー日産を引っ張ってきたゴーン氏の世界覇権への野望がルノー・日産・三菱自という新たなアライアンスで実現に近づいた。
「ルノー・日産・三菱自アライアンスは、2017年に1000万台以上の世界販売となった。フォルクスワーゲンと違い大型トラックは含んでいないため、我々こそが世界一だ」とゴーン氏らしいパフォーマンスで世界覇権への野望をあらわにした。
仏マクロン大統領が、ゴーン氏続投を容認した条件が、いかなるものなのかについても、噂が飛び交っている。仏・国内では失業率が10%と相変わらず高い。仏政府は経済再生を最優先にかかげており、明らかにマクロン大統領も「3社アライアンスよりルノー・ファースト」を求めている。
結局、仏政府とマクロン大統領、そしてルノーは、“ポスト・ゴーン選び”に失敗したといえる。ゴーン氏は、CEOを続投する。日産・ルノー・三菱自アライアンスを統括するゴーン氏は、厳しい舵取りを迫られることになる。(編集担当:吉田恒)